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終身医療保険は加入NGの理由3点

記事更新日:2017.4.29

終身医療保険とは?

ショウ君さ、CMで

「一生涯保障が続き、保険料も上がらない入院保険」

っていう保険を見たことがある?
うん、かなりCMでやってるよね。
そうだね。
そういう保険のことを終身医療保険とか終身タイプの医療保険と言うんだけど、この保険は加入すべきではないと思っている。その主な理由3つある。それを見ていくよ。


理由1 元を取るのがとても難しい

保険というのは、

【使わなければ損、使った時には大きく得になる】

でなければ加入する価値がない。自動車保険や火災保険、収入保障保険などは上記に該当するので加入価値がある。がん保険も再発を繰り返してしまった場合などは、払ったお金の何倍もの給付金を受け取れることになるので、同じく加入価値がある。

ところが医療保険、とりわけ終身医療保険は上記に該当しない。

【使わなければ損、使ったとしてもほとんど得にならない】

となってしまっている。加入者にはとても不利、保険会社にはとても有利だ。それでは加入価値がない。

実際に計算してみるとわかりやすい。ここではCMで一度は見たことがあるだろう、アフラックの終身医療保険EVERを例に見ていこう。
アヒルのやつね!
そうだね。30歳の男性が月払保険料3,280円のプラン
(保険料は2013年に本記事を最初に作成した時点のもの)
に加入したとする。仮に80歳まで生きたとすると、50年間で支払う保険料は約200万円だ。
200万円!?高額だなあ。
保険というのは長い年月で考えると本当に高い買い物なんだよね。だからこそ真剣に選ばなければいけない。

で、この保険は入院給付金が1日1万円、手術は1回につき最高40万円もらえる。ただし1入院(1つの病気)あたりの入院給付金は60日分までという制限がある。例えばAという病気の治療のために何度か入院、退院、転院などを繰り返し、通算で200日入院しても、もらえるお金は最高で60日分(60万円)ということ。


※退院から次の入院までの間隔が180日以上空けば、1入院ではなく2入院とみなされるため、最高で120日分(120万円)受給可能。もっとも再入院や転院となる場合は180日以内のケースがほとんどですが・・・。

なるほど。そしたら支払った200万円の元をとるにはどれくらい保険を使えばいいの?
雨上がり決死隊の宮迫さんのように、胃がんで20日間ほど入院し手術もした場合で、受け取れるお金は40~60万円程度だ。仮に60万円受け取れたとしても、それを3回繰り返してもまだ200万円には届かない。4回繰り返すと240万円もらえるのでようやく少しだけ得になる。といってもわずか40万円だ。


保険料総額
⇒ 200万円

胃がんで手術+20日間入院
⇒ 60万円受け取れる

これを4回繰り返すと
⇒ 240万円受け取れる

240万円(受け取った給付金総額)-200万円(保険料総額)
40万円

4回繰り返すって・・・。なんか元を取るだけでもだいぶ難しそうじゃない?
そうだね。
不幸にも何度も入院や手術を繰り返すような人生になってしまったとしても、ほとんど得にはならない。払った金額の倍の給付金をもらえる可能性なんてほぼゼロだろう。ほとんど入院をしない元気な人生を送った人は、言うまでもなくただ大損するだけだ。そんな割の悪い保険は不要だろう。
なるほど。


理由2 インフレに弱い

終身医療保険は先ほどのアフラックのEVERも含め一般的に無配当だ。
なのでどれだけ将来インフレになったとしても、受け取れる入院日額は変わらない。入院日額5,000円の終身医療保険だったら、1年後に入院しても50年後に入院しても、受け取れる入院給付金は常に1日あたり5,000円だ。そのためインフレにとても弱い保険となっている。


◆参考リンク

インフレに強い保険、弱い保険

なんで?
これも計算してみるとわかりやすい。
政府と日銀はデフレ脱却のため、インフレ率(1年あたりの物価上昇率)2%を目標とした政策アベノミクスを実施中だ。私はインフレ率2%達成はまず難しいと思っているけど、2%は無理としても仮に今後インフレ率1%で推移したらどうなるか?
すると下の表にようになる。


◆インフレ率1%で推移した場合
西暦 経過年数
(年)
2013年に100円で売っていたものが
いくらになっているか?
(円)
100円玉の価値
(円)
入院日額5,000円の価値
(円)
2013 0 100 100 5,000
2023 10 110 90 4,526
2033 20 122 82 4,098
2043 30 135 74 3,710
2053 40 149 67 3,358
2063 50 164 61 3,040


なるほど。
インフレが進むと物価が上昇する反面、お金の価値は下がっていくんだったよね。50年後の5,000円は、現在の3,040円くらいの価値しかなくなっちゃうということか・・・。
そうだね。
なので30歳で入院日額5,000円の終身医療保険に加入した人が、80歳になった時に入院をして1日あたり5,000円を受け取ったとしても、その5,000円は現在の3,040円くらいの価値しかないってことだ。
なるほど。
「1日5,000円を受け取れれば老後は安心だ」
と思ってたのに、実際には3,000円くらいしか受け取れないんじゃ
「話が違う」
って感じになるなあ。これじゃますます元は取れないね・・・。
そうだね。
それでいて保険会社は、
「若いうちに加入すれば保険料が安いのでお得ですよ」
といって、若者に加入させようとしてくる。
加入者が入院をし保険を使うことになるのは、言うまでもなく老後がメインだ。

つまり悪くいうと、お金の価値が高いうちに保険料を払わせ、老後のお金の価値が落ちた時に加入者に給付金を払う
保険会社は笑いが止まらないと思う。
なるほど。


理由3 老後は認知症などにより給付金を請求できない可能性あり

老後は5人に1人が認知症になる。認知症になってしまうと給付金請求がとても難しくなってしまう。もちろん認知症だけじゃない。脳卒中や心筋梗塞などの重病で倒れてしまった人とかも請求は難しいと思う。請求漏れをしてしまうとただの払い損になってしまう。終身保険(終身死亡保険)の死亡保険金のように、いつかは必ず保険金を受け取る保険であればまだ請求漏れに気づきやすいけど、医療保険の入院給付金や手術給付金は実際かなり請求漏れが発生していると思う。


金融庁の報告書(PDF)によると、平成13~17年度の5年間で、入院給付金と手術給付金の合計の請求漏れ件数は約8万件。つまり1年あたり約16,000件も請求漏れがあったようです。

なるほど。確かにそれは容易に想像できるなあ。


老後の医療費を保険で備えるなら・・・

ここまで見てきた3つの理由を見ると、確かに終身医療保険は良くなさそうだけど、でもやっぱり老後の医療費って不安だよね。終身医療保険がNGなんだったらどうやって備えればいいんだろう?
これは老後に向けての貯蓄方法と保険選びで詳しくは記載しているけど、老後の月収が平均的にあれば老後の医療費や介護費は十分に払っていける。なので老後の医療費を保険で備える必要性はそもそも少ないと思っている。

けどもし保険で備えるのであれば個人年金保険を推奨したい。
個人年金保険は60歳くらいまで保険料を払いこむと、その後は払った保険料以上の年金を受け取ることができる保険だ。つまり、
個人年金保険で老後の月収そのものを増額して医療費や介護費に備える
という方法だ。同じ保険料を払い込むなら、終身医療保険ではなく個人年金保険に払い込むほうが下の表のとおり有利だと思う。


終身医療保険 個人年金保険
払った保険料の
元を取れるか?

とても難しい

取れる
インフレに
対応できるか?

一般的に無配当のため不可

一般的に配当があるため可能
請求漏れの
可能性は?

あり

契約時に定めた年金受取開始時期が
近づくと、保険会社のほうから加入者に
連絡が入るため、請求漏れはほぼない
医療費以外のことには
対応できるか?

できない
医療保険からお金を受け取れるのは
入院時や手術を受けた時などに限ら
れるため、利便性がとても低い。

できる
個人年金保険は確実に現金を受け取れる。
現金は言うまでもないですが、どんな
ことにも対応できるため利便性が抜群。


なるほど、終身医療保険の弱点をうまいことカバーしてるね。
個人年金保険いいなあ。
そうだね。
けど先ほども記載したけれど、老後の月収が平均的にあれば老後の医療費や介護費は十分に払っていける。なので無理に加入する必要はない。
それに老後の月収を増額する手段も、個人年金保険が誰にとってもベストというわけではない。
例えば個人事業者であれば、個人年金保険よりも小規模企業共済や個人型確定拠出年金(※)のほうが有利だ。
詳細は下記の参考リンクを参照してもらえればと思う。


◆参考リンク

老後に向けての貯蓄方法と保険選び



※2017年からは公務員やほとんどの会社員も個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できるようになったため、こちらを優先的に検討することを推奨したいです。節税面が個人年金保険よりも圧倒的に有利なためです。
詳細はiDeCoコーナーを読んでもらえたらと思います。


補足1 医療保険よりもガン保険を推奨

上記の会話の中でも出てきましたが、がん保険は払った保険料の何倍ものお金を受け取れる可能性のある保険です。医療保険ではまず無理なことです。上記マンガの中では「1入院60日」の終身医療保険を例に挙げていましたが、たとえ「1入院120日」だとしても払った保険料の倍の給付金を受け取ることですらほぼ不可能だと思います。
つまりそれだけで
がん保険のほうが医療保険よりも加入する価値がある
と言えると思います。ですので、医療保険よりもがん保険を優先的に検討することを推奨したいと思います。
終身ガン保険も一般的に無配当なためインフレに弱いのは終身医療保険と変わりませんが、ガン保険は治療が長期間になれば払いこんだ保険料の何倍もの給付金を受け取れますので、インフレを考慮してもまだ価値が高いと思います。


◆参考リンク

・がん保険の選び方
・先進医療特約は終身がん保険につけるべき



補足2 医療保険はもし加入するのであれば定期医療保険を推奨

若者向けの定期医療保険は比較的加入価値ありで詳しくは記載していますが、若者向けの定期医療保険(定期タイプの医療保険)であれば比較的加入価値があると個人的には思います。
それに実際のところ、

「老後の医療費は年金や個人年金保険で備えるとして、今、入院することになったら貯金があまりないので困る」

という方も多いと思います。(私もです・・・)
それであれば医療費専用の貯金ができるまでの間だけ定期医療保険で防御を固めると安心だと思います。
お勧めの定期医療保険は医療保険評価ランキングを参照してもらえればと思います。


補足3(というか裏話)

一応アフラックの名誉のために・・・。

上記の会話の中では悪い保険の例としてアフラックを挙げましたが、アフラックの終身医療保険は他社と比較しても保険料は安いほうです。

私が営業をやっていた頃も他社よりかなり安かった。それもそのはず、契約獲得時に営業マンに支払われる報酬額が他社よりも低く抑えられていたからです。

そのため、よく上司からは
「EVERは儲からないから売るな!すこあん※を売れ!」
と言われていました。

※当時のアリコ(メットライフ生命)の終身医療保険「すこしであんしん終身医療保険」の略称。

あくまで私が営業をやっていた昔の話なので今はどうかはわかりません。ですが現在でもそれに近い傾向が残っている可能性はあるのではないかと・・・。

だいぶ余談になってしまったのでまとめますが、終身医療保険の中では保険料が優秀なアフラックの保険であっても、上記会話のように割の悪い保険なのです。ですので終身医療保険は本当に加入しないことを推奨します。

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