続・インフレと保険 インフレに強い保険、弱い保険を検証

記事作成日:2014.11.27

無配当保険 < 配当付き保険

ショウ君、契約年齢や満期学資金額などの諸条件が同じだとした場合、A社とB社の学資保険ではどちらがインフレに強いと思う?


A社の学資保険 B社の学資保険
返戻率 110% 110%
配当 無配当 5年ごと利差配当付き


配当って確か保険会社からもらえるお金のことだったよね?ということはB社かな?
正解。
よっしゃ!けどなんで配当付きの保険がインフレに強いの?
それを簡単に説明していくよ。
まずは前提だけど、保険会社は加入者から集めた保険料を運用して増やそうとします。
まあ集めただけで何もしないんじゃもったいないもんね。どうやって増やそうとするの?
色々な運用方法を行っているけど、結局のところ主に国債で運用しているんだ。なので国債の長期金利上がると保険会社の運用成績は良くなり、逆に長期金利が下がると運用成績も悪くなるんだ。
まあそりゃ、銀行の定期預金とかでも金利が高いほうがたくさんお金が増えるもんね!
そうだね。
そしてその運用成績(実際の運用利率)が、契約時に保険会社が設定していた基準(予定利率)を上回り、剰余金が生じた際、その一部(※)を加入者に還元するのが利差配当なんだ。
各社の決算情報剰余金処分案によると、70~80%程度を還元する会社が多いようです。


<例>

予定利率(予定運用利率)を1.5%に設定

実際には1.7%で運用できたので剰余金が生じた

剰余金の一部を配当(利差配当)として加入者に還元

なるほど、臨時ボーナスみたいでなんか嬉しいね!
じゃあ国債の長期金利が上がれば上がるほど、保険会社の運用成績も上がって配当も多くなるってことだね。
じゃあ国債の長期金利はどういう時に上がるの?
詳しくはここでは割愛するけど、一般的には好景気で経済が成長しインフレが起きると上昇するんだ。


好景気になり経済が成長

インフレ(物価上昇)が起きる

国債の長期金利が上昇する

保険会社の運用利率(運用成績)も上昇し、剰余金も多額になる

加入者は剰余金の一部を配当(利差配当)として受け取れる


理論上は、強いインフレになればなるほど多額の配当を受け取れるようになるので、配当付の保険はインフレに強いと言えるわけだ。
なるほど。


利率固定型 < 利率変動型 (積立利率変動型や予定利率変動型)

ではまたショウ君、契約年齢や保険金額などの諸条件が同じだとした場合、C社とD社の終身保険ではどちらがインフレに強いと思う?


C社の終身保険 D社の終身保険
終身保険の種類 低解約返戻金型終身保険(無配当) 低解約返戻金型の
積立利率変動型終身保険
積立利率 固定型(※1) 変動型
配当 無配当 無配当(※2)
60歳解約時の
返戻率
115% 115%
(最低保証利率で常時推移した場合)

※1 一般的に変動型と記載のないものは固定型です。
※2 積立利率変動型保険は後述のとおり配当付き保険と近い性質を既に持っているため、一般的に無配当です。



えーと、低解約返戻金型なのと無配当なのはどちらも同じだね。
違いは、C社は積立利率固定型なのに対し、D社は変動型か。
うーん、固定型のほうが響き的になんとなくガッチリして強そうだから、固定型かな??
ブブー。正解は変動型なんだ。
ううむ・・・。で、なんで変動型のがインフレに強いの?
これはさっきの配当と同じ理屈なんだ。

積立利率固定型の保険は、保険会社の実際の運用成績が良くなろうが悪くなろうが、加入時に定められた利率(予定利率)で将来の解約返戻金などが計算される。なので
「何年後に解約したら解約返戻金がいくらになるか?」
も、加入時点で確定している。
それに対し積立利率変動型の保険は、実際の運用成績(運用利率)が予定利率を上回った場合、積立利率も連動して上昇する。


好景気になり経済が成長

インフレ(物価上昇)が起きる

国債の長期金利が上昇する

保険会社の運用利率(運用成績)も上昇し、それに連動して積立利率(※)も上昇する

将来の解約返戻金や保険金が増額する



※予定利率変動型保険の場合は予定利率が上昇します。
一方、積立利率変動型保険の場合は積立利率は上昇しますが、予定利率は積立利率の最低保証利率と同値のままで変動はしません。
ちょっと難しすぎますが、
「インフレが起きると将来の解約返戻金や保険金が増額する」
という本質は同じですので、積立利率変動型保険と予定利率変動型保険は同じ保険と考えてしまって問題ないと思います。
なるほど。
これも理論上は、強いインフレになればなるほど積立利率もUPし、将来の解約返戻金や保険金も増額するということだね!
そうだね。なので利率変動型の保険はインフレに強いと言えるわけだ。
なるほど。しかしほんとに「インフレに強い理由」が配当付の保険とそっくりだね。
そうだね。配当の受取方法には、

・現金で毎年受け取ってしまう方法
・保険料と相殺する方法

など色々あるけど、すぐには受け取らずに据え置いて、将来解約返戻金や保険金を受け取る時に配当分も合算して受け取るという据置配当(すえおきはいとう)が今は主流だと思う。
据置配当だと結果的に解約返戻金などが増額することになるので、下の表のとおりますますソックリになる。


配当付き保険 積立利率変動型保険
好景気になり経済が成長

インフレ(物価上昇)が起きる

国債の長期金利が上昇する

保険会社の運用利率(運用成績)
も上昇し、剰余金が生じる

加入者は剰余金を配当(利差配当)とし
て受け取れるが、すぐには受け取らずに
据え置き、解約返戻金などを受け取る
時に合算して受け取る据置配当を選択

将来の解約返戻金や保険金が増額する
好景気になり経済が成長

インフレ(物価上昇)が起きる

国債の長期金利が上昇する

保険会社の運用利率(運用成績)も上昇し
それに連動して積立利率も上昇する




将来の解約返戻金や保険金が増額する


なるほど、最終結果が全く同じだ。
そうだね。なので

終身保険(配当付き)

積立利率変動型終身保険

は、ほぼイコール。

低解約返戻金型終身保険(配当付)

低解約返戻金型の積立利率変動型終身保険

もほぼ同じ保険(※)と考えてしまって大丈夫だと思う。
実際に同じ保険会社が配当付きと積立利率変動型の2種類の保険を販売している場合は、保険料も同じくらいの水準になっているんだ。


※ 実際には積立金の運用方針などに多少の差があります。積立利率変動型のほうがどちらかというと保守的で、プラス運用を狙いにいくよりもマイナス運用を避けるアセット・ライアビリティ・マネージメント(ALM)という手法が取られることが多いようです。
なるほど。


貯蓄力の低い保険 < 高い保険

ではまたショウ君、契約年齢や学資金額などの諸条件が同じだとした場合、E社とF社の学資保険ではどちらがインフレに強いと思う?


E社の学資保険 F社の学資保険
18歳で満期学資金を
受け取った時の返戻率
105% 110%
配当 配当付き 配当付き


どちらも配当付きか。それなら返戻率が高いほうかな!
同じ条件なら返戻率が高い保険のほうが貯蓄力が高いってことだろうから・・・。
そうだね、正解。
これはまあ説明するまでもないと思うけど、そもそも貯蓄力の高い保険のほうがインフレには強い。
2014年11月現在発売中の終身保険学資保険は、貯蓄力の高いもので運用利率(年利)が1%くらいだ。これらの保険であれば前ページで見てきたとおり、年1%までのインフレに対してなら少なくとも大きくマイナスになることはない。
なるほど。


保険料払込期間が短期 < 長期

では今度は同じ某社の終身保険の場合だ。
安倍政権と日本銀行が目標としている年2%のインフレ継続が実現した場合、プランAとプランBではどちらがインフレに強いと思う?
(記載のないその他の条件は同一とします)


プランA プランB
被保険者 30歳男性
保険金額 500万円
保険料払込期間 10年(40歳まで) 30年(60歳まで)
年払保険料 303,600円 110,000円


なにぬ・・・これは難しいなあ。
んーでも確か払込期間が短いほうが返戻率って高くなるんじゃなかったっけ?
だからプランAかな!
これは確かにちょっと難しいよね。正解はプランBなんだ。
なんで!?
ショウ君が言った通り、確かに同じ保険なら保険料払込期間が短ければ短いほど、返戻率は高くなる。

けれど前ページで記載したとおり、インフレが進行した場合は年を追うごとにお金の価値が減少していくので、毎年同じ保険料を払っていても年を追うごとに保険料の負担が減ることになるんだ。
その結果、払込期間が短ければ短いほどお金の価値が高いうちに保険料を払ってしまうことになるので、結果的に多額の保険料を払うことになってしまうんだ。
んー、んー、難しいぞ・・・。
実際に表にしてみるとわかりやすい。


◆年2%のインフレが継続した場合

経過 100円玉の
価値

保険料払込期間10年プラン 保険料払込期間30年プラン
その年に払う
年払保険料

その年に払う
年払保険料の価値

イ×ア%
その年に払う
年払保険料

その年に払う
年払保険料の価値

ウ×ア%
1年目 100 303,600 303,600 110,000 110,000
2年目 98 297,647 107,843
9年目 85 303,600 259,120 110,000 93,884
10年目 84 254,039 92,043
11年目 82 0 0 90,238
29年目 57 0 0 110,000 63,181
30年目 56 0 0 61,942
合計 3,036,000 2,781,655 3,300,000 2,512,882


なるほど、インフレが続くとお金の価値がどんどん落ちていくから、30年目は保険料11万円払っても、加入時のお金の価値でいうところの62,000円くらいしか払っていないことになるのか。
そうだね。その結果、表面上の保険料総額は

10年払込プラン・・・3,036,000円
30年払込プラン・・・3,300,000円

で、30年払込プランのほうが高いけど、払った保険料総額の価値は

10年払込プラン・・・2,781,655円
30年払込プラン・・・2,512,882円

と、30年払込プランのほうが低くなる。
なるほどなあ。そうなると返戻率も変わってきそうだね。
そうなんだ。下記のとおり。


インフレが起きなかった場合 2%のインフレが継続した場合
10年払込プラン 30年払込プラン 10年払込プラン 30年払込プラン
払い込んだ保険料総額の
価値
(ア)
304万円 330万円 278万円 251万円
60歳解約時に受け取れる
解約返戻金の価値
(イ)
386万円 218万円
損得(イ-ア) +82万円 +56万円 -60万円 -33万円
返戻率(イ/ア) 127% 117% 78% 87%


ふああぁ・・・。
インフレが起きなかった場合なら10年払込プランのほうが得になって有利だけど、年2%のインフレが継続した場合だと逆に不利になってしまうのか・・・。
そうだね。
2014年11月現在に発売されている積立貯金型(月払や年払)の学資保険低解約返戻金型終身保険は、年利(運用利率)が高いものでも1%程度。
なので、年1%以内のインフレが続く限りは保険料払込期間が短いプランのほうが有利だけど、年1%以上のインフレが続いた場合は保険料払込期間が短いプランのほうが不利になるんだ。
なるほどなあ。
じゃあ年1%以上のインフレを懸念するのであれば、短期で保険料を払いきってしまうプランは避けたほうがよさそうだね。
そうだね。特に一時払いの保険は避けたほうがよいと思う。
一時払いって?
一時払い(いちじばらい)は、保険料を括で加入払いきってしまう払い方だ。
保険料払込期間を極限まで短くしたプランといえる。
払込期間が短ければ短いほどインフレには弱くなるので、
一時払いは1番インフレに弱いプラン
となってしまうんだ。
一時払い専用の保険(一時払い終身保険など)もあるけど、こちらも同じくインフレには弱い。
なるほどね。資金に余裕がある人だったらガツンと一時払いしたいと思うけど、インフレを懸念するなら安易に一時払いを選択するのは危険ということか。
そうだね。


据置期間あり < なし

では今度は某社の個人年金保険の場合だ。
年2%のインフレ継続が実現した場合、プランCとプランDではどちらがインフレに強いと思う?
(記載のないその他の条件は同一とします)


プランC プランD
被保険者 35歳男性
保険料払込期間 25年(60歳まで)
年金種類 10年確定年金
年金受取開始年齢 60歳 65歳
年払保険料 110,000円


えーと、プランCは60歳で保険料払込が満了したら、すぐに年金を受け取りはじめるプラン。プランDは払込満了から5年間は据え置いて、65歳から年金を受取開始するプランか。これも確か据置期間があったほうが保険会社の運用期間が増える分、返戻率は高くなるんだったよなあ・・・。
けどさっきの終身保険では表面上の返戻率が高いプランのほうがインフレには不利になっていたから・・・
よし、プランC!
正解~。
っしゃあ!けどなんで??
これもさっきの、
保険料払込期間が短い終身保険ほどインフレに弱くなる
という理屈と同じなんだ。
プランDの場合、65歳から年金を受取開始するなら65歳まで保険料を払い込むプランも作成できるはず。けれどそうせずに、払込期間を5年短縮して60歳までに払いきってしまうようにしたのがプランDだ。
受取開始までの期間に対して払込期間を短くすればするほど、インフレには弱くなる。


◆プランC
 35歳で契約し60歳で年金受取開始までの期間は25年。
 払込期間も60歳までの25年。
 よって払込期間の短縮は無し。

◆プランD
 35歳で契約し65歳で年金受取開始までの期間は30年。
 払込期間は60歳までの25年。
 払込期間を5年短縮しているため、その分インフレに弱くなってしまう

んー、わけわからん・・・。
まあ実際に表にしてみるとわかりやすい。


インフレが起きなかった場合 2%のインフレが継続した場合
年金受取開始
60歳プラン
年金受取開始
65歳プラン
年金受取開始
60歳プラン
年金受取開始
65歳プラン
払い込んだ保険料総額の
価値
(ア)
274万円 218万円
10年確定年金の総額(イ) 326万円 341万円 186万円 176万円
10年確定年金で受け取った時の
損得(イ-ア)
+52万円 +67万円 -32万円 -42万円
10年確定年金で受け取った時の
返戻率(イ/ア)
119% 124% 85% 81%
年金を一括受取した場合の
返戻率
113% 118% 88% 83%


なるほどなあ。
年金を10年確定年金で受け取った場合でも一括受取した場合でも、インフレが継続した場合は65歳プランのほうが返戻率が低くなるんだね。
というか、インフレが起きなかった場合は10年確定年金のほうが返戻率が高いけど、インフレが継続した場合は10年確定年金のほうが逆に返戻率が悪くなるんだね。
そうだね。
10年間かけて年金を受け取っている間にも、インフレが進行するとどんどんお金の価値が低下していってしまうからなんだ。なのでいざ年金受取を開始する時に強いインフレが起きていたら、一括受取を検討する必要があると思う。

※2020年頃までに満期を迎え年金を受取開始する個人年金保険は、1990年代までに加入した保険がほとんどだと思います。そのような保険は予定利率が現在とは桁違いに高いいわゆるお宝保険のため、2%くらいのインフレに負けるような契約はほぼないと思います。ですのでそのような保険の場合は年金受取を選択して問題ないと思います。
なるほど。
ということで次のページでこれまでのまとめを。