終身保険で相続対策1 保険金の非課税限度額を利用した節税方法と代償分割

記事作成日:2018.7.30

保険を利用した相続税の節税方法は?

相続税の節税方法はいろいろあるけれど、このページでは保険サイトらしく、保険で節税する方法を中心に見ていきたい。
ういす。
保険で節税する方法というと、過去には裏技のように節税できるこんな保険があった。


低解約返戻金型逓増定期保険

一時払い医療保険
(メットライフ生命のリターンズなど)


タイミングによっては前者は50%以上、後者は90%以上も相続財産を圧縮できることもある、相続専用スペシャル保険だった。
90%!?
それはすごいね。
そうだね。
けれど前者は税務調査の対象になるケースが増えてきているようだし、後者も販売停止してしまったため、このコーナーでは一般的に利用されている

死亡保険金の非課税限度額を利用した節税方法

生前贈与を利用した節税方法

について詳しく取り上げてみたいと思う。
まずこのページでは以下を見ていくよ。


死亡保険金の非課税限度額を利用した節税方法の概要
・代償分割を利用するときの保険金受取人について
・配偶者の税額の軽減を受けるときの保険金受取人について



死亡保険金の非課税限度額を利用した節税方法の概要

◆家族構成
Aさん 75歳女性
Bさん 42歳長男
Cさん 40歳次男

◆Aさんの財産
銀行口座に5,200万円。その他の財産は無し。


例えば上記の家族の状況でAさんが亡くなってしまった時、財産を相続した相続人(BさんとCさん)が納めなければいけない相続税額は下の表のように100万円になる。


相続財産(合計5,200万円) 基礎控除額
死亡保険金の
非課税限度額

イのうち
エを超過した額

課税遺産総額
ア+オ-ウ
相続税額
現金
死亡保険金
5,200万円 0円 4,200万円 1,000万円 0円 1,000万円 100万円

※相続税額の計算方法は複雑なため、詳しくは国税庁のサイトを参照願います。



なるほど、いろいろ単語が出てきたな・・・。えーとまず、相続税100万円は長男と次男が50万円ずつ納めなくちゃいけないの?
相続財産である現金5,200万円を、法定相続分のとおり長男と次男が50%(2,600万円)ずつ分け合ったならそうだね。仮に長男と次男が相談した結果(遺産分割協議の結果)、長男が75%(3,900万円)、次男が25%(1,300万円)を相続したのなら、相続税も長男が75%(75万円)、次男は25%(25万円)を納めなければならない。
え、2人で相談して比率を変えちゃってもいいの!?
2人がOKならOKなんだ。
へえ・・・。であと、基礎控除額は常に4,200万円なの?
いや、

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

だ。
今回の法定相続人は長男と次男の2人なので4,200万円になった。
なお、実は2014年までは

基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

だったのが、改正によって2015年から現行に変わったんだ。
ん?ってことは今回の例の場合、2014年までだったら基礎控除額が7,000万円になるから、相続税もかからなかったってことか・・・。
そうだね。なので2015年からは基礎控除額が大幅に減少したことで、相続税を納めなければいけない人がとても多くなったわけだ。
なるほど、なんかなんでも増税増税だね・・・。
で次に、死亡保険金の非課税限度額って?

保険料負担者(通常は契約者):被相続人(亡くなった人)
被保険者:被相続人
保険金受取人:相続人


という組み合わせで死亡保険
(被保険者が亡くなってしまった時に、保険金受取人が死亡保険金を受け取れる保険。定期保険終身保険などがある。)
に加入し、相続人が死亡保険金を受け取った場合は、非課税限度額までは相続税が非課税になる特典があるんだ。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

だ。
なるほど。それで今回は非課税限度額=1,000万円だったわけか。
最後に相続税額(100万円)が課税遺産総額(1,000万円)の10%になっているけど、これは常に10%なの?
いや、今回の場合はBさんCさんどちらの法定相続分にかかる相続税率も10%なのでこうなったけど、相続する財産が高額なほど税率も高くなる。最高税率は55%なんだ。
55%!?すごい税率だなあ。
そうだね。まあその税率になるくらいの資産家であれば、いろんな節税方法を駆使するだろうから節税額もすごいんだと思うけどね。有名な方法だと、法人を設立してあえて銀行から借金して自社株の価値を下げて、その法人名義でタワマンを買ったり・・・
とかね。

とまあこのあたりの話をすると長くなってしまうので置いておいて、今回の家族の場合は生命保険を使えば簡単に相続税を節税することが可能になる。
さっきの死亡保険金の非課税限度額を利用するのかな?
そうだね。下記のプランで一時払い終身保険に加入すればいいんだ。


保険料負担者(通常は契約者):Aさん
被保険者:Aさん
一時払い保険料:900~1,000万円程度
死亡保険金:1,000万円
保険金受取人:Bさん50%Cさん50% ※受取割合は自由に決められます

これはもしもAさんが亡くなってしまった場合、BさんとCさんが50%(500万円)ずつ、死亡保険金を受け取れるというプランだね。
そうだね。例えば一時払い保険料900万円で上記のプランに加入したAさんが亡くなってしまった場合、相続税額は下の表のようになる。


相続財産(合計5,300万円) 基礎控除額
死亡保険金の
非課税限度額

イのうち
エを超過した額

課税遺産総額
ア+オ-ウ
相続税額
現金
死亡保険金
4,300万円 1,000万円 4,200万円 1,000万円 0円 100万円 10万円


おお~。見事に相続税が100万円から10万円に減ったね!
そうだね、90万円も節税できるわけだ。

保険未加入時の相続財産合計は5,200万円だったけど、保険に加入した場合は5,300万円100万円増えている。なのに納めなければいけない相続税は90万円減っている。つまりAさんの現金のうちの900万円を、死亡保険金1,000万円の一時払い終身保険に置き換えるだけで、差引190万円も得になるわけだ。
加入する一時払い終身保険は、評価ランキングの上位の保険を中心に検討してもらえれば間違いないと思う。
なるほど、これは手軽でいいね。
そうだね。
今回の例は超シンプルなケースだったけど、実際の相続でよくみられるもう少し複雑なケースの時はどうすべきか、詳しくみていくよ。


代償分割を利用するときの保険金の受取人について

◆家族構成
甲さん 90歳女性
乙さん 60歳長男
丙さん 58歳次男

◆甲さんの財産
自宅:5,000万円
現金:4,000万円


例えば上記の家族の状況で甲さんが亡くなってしまった時、乙さんが自宅5,000万円、丙さんが現金4,000万円を相続したとする。すると下の表のようになる。


相続財産(合計9,000万円) 基礎控除額
死亡保険金の
非課税限度額

ウのうち
オを超過した額

課税遺産総額
ア+イ+カ-エ
相続税額
自宅
現金
死亡保険金
5,000万円 4,000万円 0円 4,200万円 1,000万円 0円 4,800万円 620万円


なるほど。
で、これだと死亡保険金の非課税限度額を使っていなくてもったいないから、さっきの例と同じように死亡保険金1,000万円の一時払い終身保険に加入するわけだね?
そうだね。一時払い保険料が1,000万円だった場合はこうなる。


相続財産(合計9,000万円) 基礎控除額
死亡保険金の
非課税限度額

ウのうち
オを超過した額

課税遺産総額
ア+イ+カ-エ
相続税額
自宅
現金
死亡保険金
5,000万円 3,000万円 1,000万円 4,200万円 1,000万円 0円 3,800万円 470万円


おお~。やっぱり相続税額が620万円から470万円に減ったね。ということは150万円も節税できたわけだね。
そうだね。ただし注意点があるんだ。
さっきの例では、死亡保険金1,000万円を長男と次男が500万円ずつ受け取るプランで一時払い終身保険に加入していた。

けれど今回の例では、自宅を相続する長男が1,000万円全額を受け取るようにしておいたほうがよいんだ。
なんで?
ちょっと難しい話だけど、相続財産は遺産分割協議の対象になる財産対象にならない財産に分けられる。

遺産分割協議の対象になる財産は、言葉は雑だけど山分けしなければいけない財産と読み替えるとわかりやすいかもしれない。死亡保険金は受取人固有の財産になるため遺産分割協議の対象外。よって死亡保険金1,000万円を長男が全額受け取った場合は、遺産分割協議の対象となる財産は8,000万円だ。


相続財産
自宅 現金 死亡保険金
5,000万円
長男が相続
3,000万円
次男が相続
1,000万円
長男が全額受取
合計8,000万円

遺産分割協議の対象になる財産

山分けが必要

受取人である長男固有の財産になるため
遺産分割協議の対象にならない財産

山分け不要


なるほど。ということは8,000万円を兄弟が半分ずつ山分けすると4,000万円ずつだね。なのに次男は現金3,000万円しか受け取ってないから、

「兄ちゃん、あと1,000万円くれないかな?」

となるわけだね?
そうだね。
そこで長男は、受け取った死亡保険金1,000万円を次男に渡す。そうすれば次男は合計で4,000万円を受け取ることになるから、山分け対象の8,000万円の半分をしっかりもらうことになる。

このように、ある相続人が法定相続分を超える財産を相続するかわりに、自分の財産を他の相続人に渡すことで、結果的に他の相続人も法定相続分相当額を受け取れるように遺産を分割することを代償分割というんだ。

今回はまさに、長男が法定相続分(4,000万円)を超える財産(5,000万円の自宅)を相続するかわりに、自分の財産(長男固有の財産となった死亡保険金1,000万円)を他の相続人(次男)に渡すことで、結果的に次男も法定相続分相当額(4,000万円)を受け取ることができる。

代償分割でなく、単に長男が次男に1,000万円を渡すと贈与税がかかってしまうけど、遺産分割協議書に代償分割を行うことを明記の上で渡したお金
代償交付金といいます)
には贈与税がかからない。
なるほどなあ。
ん?
長男は自宅5,000万円と死亡保険金1,000万円の合計6,000万円を受け取っていた状態から、次男に代償分割で1,000万円を渡したんだから、最終的に長男は5,000万円を受け取っているよね?
次男は最終的に4,000万円しか受け取っていないから不公平なんじゃ?
そうだね。
けれどあくまで山分けの対象は8,000万円で、その半分の4,000万円(法定相続分)を次男は受け取れているから、次男はそれ以上は文句を言えないわけだ。まあちょっとかわいそうだけど、相続財産の大半を不動産が占める場合は、ある程度は不公平になってしまいやすいもんなんだ。なのでよりトラブルを避けるためには遺言などで調整が必要になるんだけど、それを話すと長くなりすぎてしまうのでここではゴメン割愛で・・・。

で、話を戻すけど、間違えて次男を保険金受取人にしてしまうと、こうなってしまう。


相続財産
自宅 現金 死亡保険金
5,000万円
長男が相続
3,000万円
次男が相続
1,000万円
次男が全額受取
合計8,000万円

遺産分割協議の対象になる財産

山分けが必要

受取人である次男固有の財産になるため
遺産分割協議の対象にならない財産

山分け不要


これだと、次男は既に現金3,000万円と死亡保険金1,000万円で合計4,000万円を受け取っている。
けれど山分け対象の8,000万円については、次男はそのうちの3,000万円しか受け取っていないので、

「兄ちゃん、あと1,000万円くれないかな?」

と要求できてしまう。
なんと・・・。
そりゃ長男としては困った話になるね。
けどまあ1,000万円を渡すしかないのかな?
渡すしかないだろうけど、1,000万円の現金がある人なんてそうはいない。なので最悪、相続したばかりの自宅を売らなくちゃいけないかもしれない。いずれにしても大変な事態になってしまうわけだ。
なるほどなあ。
そしたらやっぱり、死亡保険金を長男が受け取るようにしておいたほうがいいわけだね。
そうだね。保険金受取人や受取比率は、契約者が保険会社に連絡すればいつでも変更可能なので、代償分割になりそうな方は適宜変更をしておくとよいと思う。
なるほど。


配偶者の税額の軽減を受けるときの保険金の受取人について

◆家族構成
Aさん 80歳 夫
Bさん 75歳 妻
Cさん 50歳 長女
Dさん 47歳 次女

◆Aさんの財産
もろもろで合計:2億円


例えば上記の家族のAさんは、自分が亡くなってしまった場合、法定相続分のとおり、
「妻1億円、長女5,000万円、次女5,000万円
というように財産を分け合ってほしいと思っている。仮にこのように相続した場合、相続税は下の表1と表2のどちらになると思う?


表1
相続税額
妻Bさん 長女Cさん 次女Dさん 合計
1,350万円 675万円 675万円 2,700万円


表2
相続税額
妻Bさん 長女Cさん 次女Dさん 合計
0円 675万円 675万円 1,350万円


ん?
なんで表2は妻が納めなければいけない税額が0円になっているんだ?これは間違いでしょ?だから表1かな。
正解は表2なんだ。
配偶者(この例では妻)の相続税は優遇されており、配偶者の税額の軽減があるため、配偶者が相続した財産が法定相続分(この例では1億円) or 1億6,000万円のどちらか多い額までの場合は、相続税が非課税なんだ。
へえ、すごい優遇だなあ。
そうだね。
そして本題。今回も一時払い終身保険に加入することで相続税を節税可能なんだけど、下記のように保険金受取人を
「長女50%、次女50%
にしておくと節税額がより大きくなるため有利なんだ。


保険料負担者(通常は契約者):Aさん
被保険者:Aさん
一時払い保険料:1,500万円
死亡保険金:1,500万円
保険金受取人:長女50%(750万円)、次女50%(750万円)

どうして?
今回の場合、法定相続人は妻・長女・次女の3人。ということは

死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数=1,500万円

なので、死亡保険金1,500万円をこの3人がどういう比率で受け取ろうが、受け取った保険金に相続税はかからない。
うんうん。
けれどそもそも妻は1億6,000万円までは非課税なんだから、妻が保険金を受け取っても非課税の恩恵は受けられないのでもったいない。なので同じ
「妻1億円、長女5,000万円、次女5,000万円
と財産を分け合うにしても、一時払い終身保険に加入し、非課税の恩恵を受けられる長女と次女が保険金を受け取るようにしたほうが有利なんだ。


一時払い終身保険に未加入。
1億円 長女5,000万円 次女5,000万円
保険金以外
1億円
死亡保険金
0円
保険金以外
5,000万円
死亡保険金
0円
保険金以外
5,000万円
死亡保険金
0円
いくら相続税を
納めないといけないか?
非課税 675万円 675万円


一時払い終身保険に加入。保険金受取人は妻、長女、次女が3分の1ずつの場合。
1億円 長女5,000万円 次女5,000万円
保険金以外
9,500万円
死亡保険金
500万円
保険金以外
4,500万円
死亡保険金
500万円
保険金以外
4,500万円
死亡保険金
500万円
いくら相続税を
納めないといけないか?
非課税 566万円 非課税 566万円 非課税


一時払い終身保険に加入。保険金受取人は長女、次女が50%ずつの場合。
1億円 長女5,000万円 次女5,000万円
保険金以外
1億円
死亡保険金
0円
保険金以外
4,250万円
死亡保険金
750万円
保険金以外
4,250万円
死亡保険金
750万円
いくら相続税を
納めないといけないか?
非課税 534万円 非課税 534万円 非課税


なるほど。一時払い終身保険に未加入だと、長女と次女は各々675万円も相続税を納めなくちゃいけない。それが一時払い終身保険に加入し、保険金を長女と次女が50%ずつ受け取るようにすれば、長女と次女は各々534万円ずつ相続税を納めればいいわけか。1人あたり141万円、2人で280万円も節税できるわけだね。
そうだね。
では次のぺージでは生前贈与を利用した相続税の節税方法についてみていくよ。