乳がん対策1 原因と予防方法
記事更新日:2016.7.17
乳がんは若い方でも発症しやすいガン
※本ページは日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインなどを参考に作成しています。 最後は乳がん。2014年の統計では女性が5番目に亡くなってしまった方が多いガンなんだ。ただし発症数は1番多く、女性12人に1人が一生涯の中でこのガンを発症してしまうらしい。 |
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そうなんだ・・・。12人に1人って相当多いよね。僕の小学校は1クラスに男女15人ずつくらいだから、1クラスに1人以上は発症してしまうということか・・・。 | |
そうだね。しかも下記の年齢別の乳がん罹患率 (1年間に新たにガンと診断される確率) のとおり、若い方でも残念ながら多くの方が発症してしまっているんだ。 |
年齢別の乳がん罹患率
年齢層(歳) | 罹患率(%) |
24以下 | ほぼ0 |
25~29 | 0.01 |
30~34 | 0.04 |
35~39 | 0.06 |
40~44 | 0.18 |
45~49 | 0.23 |
50~69 | 0.21 |
70~74 | 0.18 |
75~80 | 0.15 |
本当だ。30代から増え始めて40代後半がピークになっているね。 | |
そうだね。 30~40代といったら子育て真っ只中の世代。そんな大事な世代なのに発症しやすいなんて最悪なガンだと思うよ。事実、子供が小さいのに乳がんを発症してしまい、亡くなってしまっている方がたくさんいる。幼い子供を残して亡くなってしまうなんて、どれだけ無念だろうと思うと・・・。 |
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・・・。 | |
ふう・・・あかん。希望をもっていかないとね! 医者でもない自分なんかが言うのは生意気かもだけど、ポジティブかつシンプルに考えれば、30~40代の女性が発症してしまうガンの約半数がこの乳がんなので、 乳がんの予防や早期発見率が向上すれば と思う。ということでまずは予防方法から。 |
乳がんの5年生存率と原因
予防 |
あまりできない |
早期発見の可否 |
可能 |
早期発見時の5年生存率(5年相対生存率) |
1期はほぼ100% |
ここまで見てきたとおり、乳がんは若くても発症しやすいという意味では最悪なガンだけど、ガンの中では治りやすい部類なんだ。1期の5年生存率は上記のとおり100%近く、2期でも90%以上、3期の進行ガンでも約80%もあるんだ。 | |
なるほど。ということは早期発見できれば希望は大いにあるということだね!しかし予防が難しいのはなんでなの? | |
予防をするためには原因をハッキリさせないといけない。 では乳がんの原因はなんなのか? 下の表を見てほしい。これは1975年、1985年、1995年、2005年、2010年の年齢別の乳がん罹患率だ。 |
ん?同じ年代の女性でも近年になるにつれ罹患率が上昇していってない? 45~49歳の女性10万人のうち、1975年は50人くらいしか罹患者がいなかったのに、2010年は230人くらいも罹患している。約5倍に増えている・・・。 |
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そうなんだ。これだけ上昇するということは絶対に偶然ではない。何らかの原因があるために、現代の女性のほうが乳がんになりやすくなってしまっているわけだ。 では1975年の女性と現代の女性では何が違うのか?何が変化したのか? |
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うーん、なんだろ?喫煙率? | |
たしかに国立がん研究センターのデータによると、喫煙すると乳がんの発症率が3.9倍に増えてしまうらしいけど、成人喫煙率表を見ると女性の喫煙率は1975年が約15%、2010年は約12%と、むしろ減少している。 変化しているのは女性の社会進出度。 共働き世帯数の推移 を見ると、1980年は 「共働き世帯は片働き世帯の約半分」 だったのが、1992年頃に共働き世帯が上回り、2010年には 「共働き世帯は片働き世帯の約1.25倍」 になっている。 |
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たしかに、僕の周りでも共働きの家が多いような気がするなあ。 | |
そうだね。 女性の社会進出が進むことはもちろん悪いことではないと思う。自分の娘にも、将来は地位的にも収入的にも男に負けない強い女性になってほしいと思うしね。 けれど女性の社会進出が進んだ結果、初婚平均年齢や第一子出産時の平均年齢が上昇し、結婚しない女性も増加している。 |
西暦 | 第一子出産時の母親の平均年齢(歳) |
1975 | 25.7 |
1985 | 26.7 |
1995 | 27.5 |
2005 | 29.1 |
2010 | 29.9 |
2015 | 30.7 |
※厚生労働省の人口動態統計などから作成
ほんとだ。1975年と2015年では5歳も上昇しているね。 | |
そうだね。 そして本題に戻るけど、乳がんの発症にはエストロゲンという女性ホルモンが大きく関与していることが明らかになってきているようなんだ。 |
エストロゲンと乳がん
エストロゲンが乳がんの発症率を高めてしまう理由は下記のとおり。 エストロゲンが乳房の中にある乳腺組織を刺激し細胞の増殖を促進 エストロゲンは月経が始まると分泌量が急増し、閉経すると分泌されなくなる。乳がんは初潮が早い人や閉経が遅い人がなりやすいと言われているけど、それも結局エストロゲンの影響を受ける期間が長くなるからというのが理由なんだ。 |
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なるほど。胃がん編のピロリ菌と少し似ているね。エストロゲンが乳がんの発症を促進してしまうわけだね。 | |
そうだね。 そしてこのエストロゲン、妊娠中や授乳中は体内での影響力が小さくなるんだ。 |
妊娠中 |
プロゲステロンという別の女性ホルモンがエストロゲンよりも体内で優位になる ↓ エストロゲンの影響力が小さくなる |
授乳中 |
出産時にエストロゲンが血液中から消失し、母乳の分泌が促進される ↓ エストロゲンの影響力を受けなくなる |
エストロゲンの分泌量が最も多いのは10~20代。つまりエストロゲンの影響力が最も強いのも10~20代。よって、その年代に妊娠・授乳を経験しエストロゲンの影響を強く受けなかった女性が多かった1975年は、現代よりも乳がんの発症率が低かったと考えられているようなんだ。 |
1975年の女性 |
第一子出産時の平均年齢が25.7歳 ↓ エストロゲンの影響力が強い20代に妊娠・授乳を経験する方が多かったため、エストロゲンの影響を強く受けていない方が多かった。 ↓ 乳がん発症率が低かった |
現代の女性 |
第一子出産時の平均年齢が30歳超 ↓ エストロゲンの影響力が強い20代に妊娠・授乳を経験する方が少ないため、エストロゲンの影響を強く受けてしまっている方が多い。 ↓ 乳がん発症率が上昇している |
なるほど。 ということは、第一子出産時の平均年齢が1975年(25.7歳)と同じくらいまで低下すれば、乳がんの発症率も大きく低下するはずだよね? |
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極論を言えばそうかもしれないけど、実現はまず難しいと思う。 浪人や留年をせずストレートで大学を卒業しても、新社会人の年には22~23歳。25.7歳までわずか2~3年しかない。 エストロゲンは女性にとって必要なホルモンなので、ピロリ菌のように排除していいようなものでもない。 なので残念だけど本当に乳がんの予防は難しいことだと思う・・・。 |
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なるほどなあ、うーん。そしたら早期発見に努めるしかないのかなあ? | |
そうだね。けれど一応、効果的かもしれない予防方法をいくつか。 乳がんの発症にはエストロゲンが深く関与している可能性が高いのだから、 エストロゲンの影響力を弱める方法 と言えると思う。次の2つはまさにそのような方法です。 |
乳がんの予防方法1 アメリカ産牛肉をなるべく控える
アメリカ産の牛肉には、これまで見てきたエストロゲンが国産牛肉の何百倍も含まれているようなんだ。 (Wikipediaには600倍と記載あり) |
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マジで?なんでなの? | |
エストロゲンを成長促進剤(成長ホルモン剤)として牛に投与しているからなんだ。そしてそれが牛肉に残留してしまっているんだ。 アメリカ人女性の乳がん発症率は日本人女性の2.5倍。国立がん研究センターの資料を見ると、アメリカ在住の日本人女性の発症率もアメリカ人と近い値になっている。となると人種の問題ではなく、食生活に問題があるのだと推察できる。この牛肉に残留しているエストロゲンが関連している可能性も、かなり高いと思う。 |
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なるほど。乳がんの原因の可能性が高いエストロゲンを摂取するのは、いかにも危険そうだよね。じゃあ控えたほうがよさそうだね。というか米国産以外は大丈夫なの? | |
日本やEUでは牛にエストロゲンを投与することは禁止されているので、国産牛は大丈夫だと思う。オーストラリア産の牛肉(オージービーフ)は、ホルモン剤を使用しているものとしていないものが混在しているようなので、 ホルモン剤未使用(No added hormones) と記載がないものは避けた方がよいと思う。 |
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なるほど。 |
乳がんの予防方法2 イソフラボンを適度に摂取する
大豆に含まれるイソフラボンはエストロゲンと化学構造が似ていて、植物エストロゲンともよばれている。これまで見てきたとおりエストロゲンは乳腺組織を刺激し細胞の増殖を促進させるけど、イソフラボンはエストロゲンより先に乳腺細胞のエストロゲン受容体と結合し、エストロゲンによる促進作用を弱める。これにより乳がんの発症率を低下させると言われているんだ。 | |
すごいじゃんイソフラボン!ようするにエストロゲンをジャマするわけだね! | |
そうだね。国立がん研究センターのデータでも、実際に発症率が低下することが確認されているので、予防効果があるのは確かだと思う。けれど摂取しすぎると悪影響というデータもあるので、普段の食事に大豆 (納豆、豆腐、おから、きな粉、味噌など) を適度に取り入れ、自然に摂取するといいと思う。 それでは次のぺージ(早期発見方法)へ。 |