胃がん対策2 ピロリ菌の検査・除菌・費用と健康保険
記事作成日:2015.11.28
ピロリ菌の感染経路はカミカミ
ピロリ菌は赤ちゃんの頃に、親が噛みつぶしてくれた食べ物を食べることが主な感染経路らしい。ショウ君のお父さんお母さんは、固いものをカミカミして柔らかくして食べさせてくれなかった? | |
え?いや赤ちゃんの時のことなんて覚えてないけど? | |
そっか、そうだね、失礼・・・。私もわからないや。けどたしか私の母は弟に、噛みつぶしたゴハンとかを与えてた記憶があるんだよなあ。 | |
うーん、僕も弟がいるけど、カミカミして与えてたのは覚えてないなあ。市販の離乳食をよく食べさせていた気はするけど・・・。 | |
そうだね。まさにそうなんだ。衛生状態が良く市販の離乳食も多く販売されている近年の子供は感染率が低い。けれど世代が上がるにつれ感染率が高くなっているんだ。 |
(東京社会保険協会のサイトより)
なるほど。世代によってだいぶ感染率に差があるんだね。とはいえ僕も感染している可能性もあるわけか・・・。 | |
そうだね。ピロリ菌は免疫力の弱い4~5歳くらいまでしか感染しないようなので、それくらいの小さいお子様がいる方は、お子様にカミカミした食べ物を与えないように注意するとよいと思う。 では続いて感染しているかどうかの検査方法について。 |
ピロリ菌の検査方法と費用
除菌の前にまずはピロリ菌に感染しているかを検査しなければいけない。検査方法には下記の6つがある。 |
内視鏡を使う検査 |
内視鏡を使わない検査 |
※ 武田薬品工業のサイトより
うーん、いろいろあるんだなあ。で、どれがいいの? | |
ストレートな質問だな・・・。日本消化器病学会のサイトによると、尿素呼気試験(にょうそこきしけん)が総合的に最も信頼度が高いらしい。また抗体測定も精度が高いとのこと。ただし抗体測定は除菌をしたあとでもしばらくは抗体が残るために、実際にはピロリ菌がいなくなったにもかかわらず判定が陽性(感染中)になってしまうことがあるらしく、除菌が成功したかどうかの判断には向かないらしい。 |
尿素呼気試験 | 抗体測定 | ||
血液 (血液中の抗体を調べる) |
尿 (尿の抗体を調べる) |
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健康診断や人間ドックの オプション検査実施状況 |
よく実施されている | あまり実施されていない | |
インターネットで検査キットが 販売されているか? |
されていない | されている | |
検査料 | 2,000~4,000円程度 | ||
除菌前に、そもそもピロリ菌に 感染しているかどうかを 確認するのに向いているか? |
向いている | ||
除菌後にピロリ菌がいなくなったか (除菌が成功したかどうか)を 確認するのに向いているか? |
向いている | 向いていない |
なるほど。じゃあ健康診断や人間ドックを近いうちに予定している方であれば、オプション検査を申し込むのがいいのかな? | |
そうだね。特に血液の抗体測定がラクだと思う。健康診断や人間ドックには必ず血液検査があるけど、その血液検査用に採血した血液中の抗体を調べてくれるので、余計な時間が一切かからない。 | |
なるほど、それはいいね!じゃあ健康診断や人間ドックを近いうちに予定していない方は? | |
その場合はインターネット (楽天やAmazon) で検査キットを購入するのが手軽だと思う。検査キットには採血タイプと採尿タイプがあるけど、どちらも精度は同じくらいのようなので採尿のほうがラクだと思う。 実は私もこの記事を書きながら 「ピロリ菌検査を早めに受けなきゃ!」 という思いが強くなっていったんだけど、少し前に健康診断を受けたばかりなのではてどうしようかと。わざわざ検査のためだけに病院に行くのもメンドイなあ・・・と思ってたらインターネットで検査キットが売ってたので買ってしまった! まだ検査結果は来てないけど、できれば陰性(未感染)になってほしいなと思うよ。 (後日談ですが陰性でした!) |
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そっか、陰性だといいね。陽性だった場合はどうするの? |
ピロリ菌の除菌方法
健康診断のオプション検査や検査キットの結果、陽性(感染中)になってしまった場合は除菌が必要になる。流れは以下のとおり。 ※日本消化器病学会の資料を元に作成しています。 健康診断のオプション検査や検査キットでピロリ菌陽性となった ↓ 胃腸科や消化器科へ行きピロリ菌陽性となったことを伝える ↓ 健康保険適用(自己負担3割)で内視鏡診断(胃カメラ)を受ける ※この際の名目は「胃がんの疑い」などになるそうです。 ※既に健康診断などで内視鏡検査を受け「胃炎」と診断されている場合は省略可だそうです。 |
除菌治療までの流れ |
健康診断のオプション検査や検査キットでピロリ菌陽性となった ↓ 胃腸科や消化器科へ行きピロリ菌陽性となったことを伝える ↓ 健康保険適用(自己負担3割)で内視鏡診断(胃カメラ)を受ける ※この際の名目は「胃がんの疑い」などになるそうです。 ※既に健康診断などで内視鏡検査を受け「胃炎」と診断されている場合は省略可だそうです。 ↓ 既に炎症がある場合は 「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」 と診断を受ける。 炎症がない場合は 「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の疑い」 と診断を受ける。 健康保険適用可(自己負担3割) ↓ 状況に応じてピロリ菌感染有無を改めて検査し、感染が確認された場合は健康保険適用(自己負担3割)で除菌治療へ |
ん?いやいやちょっと待って!内視鏡診断って!?単に除菌薬だけもらうことはできないの? | |
これは残念ながらできないんだ。 上記のとおり、ピロリ菌の除菌治療を健康保険適用で受ける (つまり自己負担が3割ですむようにする) には、内視鏡診断が必須(※)になっている。なので 「健康診断でピロリ菌陽性だったので除菌薬だけ下さい。胃カメラはけっこうです。健康保険適用で自己負担は3割でお願いします!(`・ω・´)」 というわけにはいかないんだ。 ※例外はあります。例えば健康診断のバリウム検査で胃潰瘍(胃に穴が開いてしまっている)と既に診断されている場合は、内視鏡診断なしでも健康保険適用でピロリ菌感染診断を受けられ、感染が確認された場合は健康保険適用で除菌治療を受けられます。詳細は日本病院会の資料を参照願います。 |
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ううぬ・・・。けど胃カメラってキツイって聞くよね? | |
そうだね。私も受けたことはないけど、母親の話ではやっぱりけっこう大変らしい。けど最近は 経口内視鏡(口から入れる) よりは負担が少ない 経鼻内視鏡(けいびないしきょう/鼻から入れる) が普及してきているようなので、予め病院に電話して経鼻内視鏡が受診できるか確認しておくとよいかもしれない。 |
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なるほど・・・。ちなみに、 「自己負担10割でもいいから、胃カメラなしで除菌薬だけ下さい」 って言ったら? |
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それは病院によるけど、中には対応してくれるところもあるらしい。 けれどピロリ菌に感染していることがわかったということは、既に早期の胃がんなどを発症してしまっている可能性も相応にあるということなのだから、この機会にしっかりと内視鏡診断を受けておいたほうがいいと思う。 |
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うーん、それはたしかに。で、内視鏡診断のあとはすぐに除菌治療へ進むんじゃなくて、またピロリ菌に感染しているかどうか検査するわけ? | |
そうだね。これも中には健康診断結果を信用する形で省略されるケースもあるらしいけど、原則的には再度受けることになっているらしい。 | |
なるほど。で、その結果やはり「ピロリ菌感染中」となったら、ようやく除菌治療に入るわけか。 | |
そうだね。除菌治療の流れは以下のとおり。 |
除菌治療の流れ |
1次除菌 抗生物質と胃酸を抑える薬を1週間服用する。 除菌成功率は約75%。 健康保険適用可(自己負担3割) ↓ 1~2か月後に除菌が成功したかどうか確認するために感染診断を受ける。 尿素呼気試験が推奨されている。 健康保険適用可(自己負担3割) ↓ 陰性なら除菌成功。 陽性なら2次除菌で以下へ進む。 ↓ 2次除菌 抗生物質を変更し1週間服用する。 除菌成功率は95%以上。健康保険適用可(自己負担3割) ↓ 1~2か月後に除菌が成功したかどうか確認するために感染診断を受ける。 健康保険適用可(自己負担3割) ↓ 陰性なら除菌成功。 陽性なら3次除菌へ進む。 3次除菌は健康保険適用不可(自己負担10割) |
なるほど。けっこう長い道のりだなあ。 | |
そうだね。それに抗生物質の影響で腸内の細菌バランスが悪くなることが理由で、除菌中に下痢になってしまう方が10~20%くらい出てきてしまうらしい。 そこでとっておきのアイテムがある! |
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なになに!? | |
どどんっ! |
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ん?これはヨーグルト?? |
LG21ヨーグルトで除菌成功率UP
東海大学医学部の研究レポートによると、LG21乳酸菌はピロリ菌を抑制する作用があり、除菌治療中にLG21乳酸菌を含んだヨーグルトを摂取していると除菌成功率が10~20%向上する上、下痢も抑えられるようになるとのことなんだ。 | |
へえ、すごいね! | |
そうだね。LG21乳酸菌は、東海大学医学部、わかもと製薬、明治乳業の3者によって共同研究された乳酸菌で、上の図のヨーグルトのとおり明治乳業から現在は販売されている。スーパーやコンビニでも販売されているので、除菌治療中の方は摂取するとよいかもしれない。 | |
なるほど。 |
ピロリ菌の除菌費用
最後に気になるお値段。 ただし、初診料は病院によって異なるし、内視鏡にどのタイプを使うか、感染診断の検査方法をどれにするかなどによっても費用が変わってくるので一概には言えない。なので参考程度に見てほしい。 |
◆参考例
※健診のオプション検査等でピロリ菌陽性となり、病院へ行って健康保険適用(自己負担3割)で内視鏡診断、感染診断、一次除菌を受け、除菌成功となった場合
項目 | 実際にかかる費用 |
健康診断のオプション検査料や検査キット代 | 2,000~4,000円くらい |
初診料(※1) | 1,000~3,000円くらい |
内視鏡診断料 | 約5,000円 |
感染診断料(除菌前に感染しているかの確認) | 約3,000円 |
除菌薬処方料 | 約2,000円 |
感染診断料(除菌後に除菌されているかの確認) | 約3,000円 |
その他診察代 | 約1,500円 |
ヨーグルト代(※2) | 約4,000円 |
合計 | 約21,500円~25,500円 |
※1 既にかかったことがある胃腸科や消化器科に行くなら無料
※2 除菌開始から除菌終了まで40日間。1日100円として試算。
うーん、2万円以上もかかるのか。高いなあ。1次除菌で成功しなかった場合はどれくらい更に費用がかかるの? | |
5,000~6,000円プラスになってしまうらしい。 | |
うーん。これじゃあ気軽には除菌できないね。 | |
そうだね。ピロリ菌除菌は明らかに胃がんを撲滅させるのに有効なんだから、国はもっとガンガン助成金を出してでも除菌を促すべきだと思う。消費税を10%にするとか言ってるんだったら、それくらいはやってほしいよね。 | |
そうだね。 | |
では次のページでは胃ガンの早期発見方法とまとめを。 |