収入保障保険と税金3 年金に課せられる所得税の計算方法
記事更新日:2017.11.25
所得税は0円~数千円程度にしかならない
さて前ページの続きだ。 保険会社はAさんの妻に30年間、毎年180円の年金を支払い続けるわけだけど、その支払に使用する資金をどこから捻出するかは徐々に変化していく。 具体的には初期の頃は元金から捻出する割合が大きいけど、徐々に運用益から捻出する額が大きくなっていき、最後の30年目では元金から捻出する額が107.5万円、運用益から捻出する額が72.5万円となっている。 (あくまで管理人の独自の試算結果ですので正確な値ではありません。) この運用益から捻出する額が1番大きくなる最後の30年目の所得税が実際にいくらになるか見ていく。 まずこの年に受け取った年金のうち、運用益から受け取った分(72.5万円)は雑所得という所得の一種になるんだけど、受け取った額がそのまま雑所得になるわけではない。雑所得は下記の通り、受け取った額から必要経費を引いたものになる。 |
◆Aさん(夫)が亡くなってから30年目の妻の雑所得
運用益から受け取った額 ア |
必要経費 イ |
雑所得 (ア-イ) |
72.5万円 | ?円 | ?円 |
なるほど。この?を埋めていくわけね。 | |
そうだね。 次に必要経費の計算だ。これがなかなかメンドイ。まずは、Aさんが保険に加入してから亡くなってしまうまでの4年間で支払った保険料を計算する。 |
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えーと、この保険は月払保険料4,485円だったから、4年間で払った保険料は 4,485円×4年間(48ヶ月)=215,280円 だね。 |
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ありがとう。 つまり今回の例では、Aさんが保険会社に払ったのは215,280円、妻が保険会社から受け取れる年金総額は5,400万円。 215,280円払って、5,400万円もらう。 言い換えると、この215,280円は年金総額(5,400万円)を得るために必要な経費だったと言える。 そこから、運用益から受け取るお金(1,080万円)を得るために必要な経費を計算すると下記のようになる。 |
年金総額(5,400万円=ア)を 得るために必要な経費 |
215,280円 (Aさんが亡くなるまでの4年間で払った保険料) |
運用益から受け取るお金(1,080万円=イ) を得るために必要な経費 |
43,056円 215,280円×(イ/ア)=43,056円 |
なるほど。 | |
次に、運用益から受け取るお金の総額(1,080万円)は30年間かけて妻が受け取っていくものだ。 30年目の雑所得を計算するには、30年目の運用益から受け取るお金(72.5万円)を得るのに必要だった経費を計算しなければいけない。 計算すると下記のようになる。 |
年金総額(5,400万円=ア)を 得るために必要な経費 |
215,280円 (Aさんが亡くなるまでの4年間で払った保険料) |
運用益から受け取るお金の総額(1,080万円=イ) を得るために必要な経費 |
43,056円 |
30年目の運用益から受け取るお金 (72.5万円=ウ)を得るために必要な経費 |
2,900円 43,056円×(ウ/イ)≒2,900円 |
うーん、複雑だなあ。 | |
そうだよね。でもこれでようやく、30年目の雑所得が計算できる。 |
◆Aさんが亡くなってから30年目の妻の雑所得
30年目の運用益から受け取るお金 ア |
必要経費 イ |
雑所得 (ア-イ) |
72.5万円 | 2,900円 | 722,100円 |
なんか必要経費が少ないから、受け取ったお金がほぼそのまま雑所得って感じだね。 | |
そうだね。 この例のように加入してからそれほど経過していないうちは、それまでに払っていた保険料も少ないので必要経費もとても低くなる。 さて、雑所得が722,100円とわかったので、いよいよ所得税を計算していくよ。所得税はすべての所得から所得控除を引いたものに所得税率をかけたものだ。妻はBさんが亡くなって以降は働きに出ず、収入は遺族年金と収入保障保険の年金だけとする。遺族年金は非課税所得(所得にならない)なので、所得は収入保障保険の年金による雑所得のみ(722,100円)になる。所得税の算出表は以下のとおり。 |
◆Aさんが亡くなってから30年目の妻の所得税
所得ア | 所得控除イ | 所得税率 ウ |
所得税 (ア-イ)×ウ |
||
? | ? | 合計 | |||
722,100円 | ? | ? | ? | ?% | ?円 |
なるほど。所得控除の「?」には何がうまるの? | |
所得控除は国税庁のサイトに記載のとおり、生命保険料控除や医療費控除などたくさんの種類があるけど、ここでは下記の2つだけ考えてみる。 ◆基礎控除 誰でも適用される控除。控除額は38万円。 ◆寡婦控除 この例の場合、妻は所得合計が500万円以下なので寡婦の要件に該当する。この時点では子は自立しているため一般の寡婦に該当したとし、控除額は27万円。 |
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なるほど。あと所得税率は何%になるの? | |
妻の合計所得は722,100円なので、国税庁のサイトの通り一番低い5%になる。 これらを先ほどの表に入れていくと下記の通りとなる。 |
◆Aさんが亡くなってから30年目の妻の所得税
所得ア | 所得控除イ | 所得税率 ウ |
所得税 (ア-イ)×ウ |
||
基礎控除 | 寡婦控除 | 合計 | |||
722,100円 | 38万円 | 27万円 | 65万円 | 5% | 約3,600円 |
3,600円か、痛いなあ・・・。 | |
いやいや、受け取れる年金年額180万円に対して所得税3,600円というのはかなり割安だ。同じ180万円をパート収入で得た場合は、年間の所得税が35,000円と10倍近くになる。それと比較すると割安なのがわかると思う。 | |
そうなんだ・・・。それだったら確かに割安だなあ。 | |
この例の場合、計算上は27年目くらいまでは全く税金がかからない。それから30年目までは多少かかるようになるけど、それでも年に数千円程度だ。なので、私がこのサイトで推奨している加入方法の場合、収入保障保険から受け取れるお金には税金はほぼかからないと思ってしまって大丈夫だ。 | |
なるほど。税金がかからないのは素晴らしいね! ちなみに今回のように3,600円所得税を払わなきゃいけないってことがわかったとしたら、わざわざ税務署に行って払わなきゃいけないの? |
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いや、詳細は割愛するけど、その年に受け取る年金年額が一定額以上の場合は、保険会社があらかじめ税金を差し引いて支給する (源泉徴収する) ので、基本的にはわざわざ税務署に行く必要はないんだ。 逆に税務署に行くことで引かれすぎた源泉徴収税を還付(返金)してもらえるケースもあるけど、収入保障保険の場合だと還付できたとしてもわずかな額だと思うので、わざわざ行くメリットがあるケースはほとんどないと思う。 |
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なるほど。 | |
今回のAさんの妻は合計所得が125万円以下の寡婦に該当するので、住民税も非課税になるし健康保険料も割引になる。 (大阪市の住民税と国民健康保険の場合で試算。大阪市に限らず私が調べた限りでは他の市町村も同じ条件でしたが、詳細は自身の住む自治体のサイトを確認願います。) よって年収がほとんどそのまま手取りになると考えてもいいと思う。 Aさんが亡くなってから子供が18歳になるまでは遺族年金も受け取れるため、その間の妻の年収は下の表のとおり300万円くらいになるけど、300万円がほぼそのまま手取りになるのであれば年収400万円以上のサラリーマンの手取りとほとんど変わらなくなる。これだけ手取りがあれば、妻は子供2人を不自由なく育てることができると思う。 |
◆Aさんが亡くなってから子供が18歳になるまでの妻の収入
月収 | 年収 | |
遺族年金 | 約10万円(※) | 約120万円 |
収入保障保険の年金 | 15万円 | 180万円 |
合計 | 25万円 | 300万円 |
※自営業者の妻と18歳未満の子供2人の場合。生命保険文化センターのHPより。
なるほど。収入保障保険の力はすごいね。 | |
そうだね。 次回は本編の最後、生命保険料控除について軽く。 |
収入保障保険の年金は所得税の課税対象になるものの、実際にはほとんど税金がかからない。 |