通常NISA 海外ETF購入時のシミュレーション2
記事更新日:2019.6.1
手順4 2022年の年末にロールオーバーを実施
さて前ページの続きを。 | |
2019年に購入した海外ETFのVDCが、非課税期間終了時にどうなったか? っていう話だったよね? |
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そうだね。 通常NISAの非課税期間は最大で5年間。具体的には、購入した年を1年目として、5年目の年末までとなっている。今回は2019年に購入しているので、下の表のとおり2023年の年末までが非課税期間となる。 |
西暦 | 購入してから何年目? |
2019年 (購入した年) |
1年目 |
2020年 | 2年目 |
2021年 | 3年目 |
2022年 | 4年目 |
2023年 | 5年目 |
なるほど。つまり2019年の1月に購入しようが12月に購入しようが、2019年に購入した運用商品の非課税期間は常に2023年の年末までということか。 | |
そうだね。 そしてその2023年末まで、今回のシミュレーションでは基準価額が年4%ずつ上昇していったという仮定なので、下の表のようになる。 |
基準価額(年4%ずつ上昇) | ||
1株あたり | 80株あたり | |
2019年1月 | 約125ドル | 約10,000ドル |
2020年1月 | 約130ドル | 約10,400ドル |
2021年1月 | 約135ドル | 約10,816ドル |
2022年1月 | 約141ドル | 約11,249ドル |
2023年1月 | 約146ドル | 約11,699ドル |
2023年末 | 約152ドル | 約12,167ドル |
2019年に購入した時点では80株で約10,000ドルだったのが、2023年の年末時点では約12,167ドル。ということは 約2,167ドル(約216,700円) も値上がりしたということか。 |
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そうだね。 よって2023年の年末時点で80株をすべて売却してしまえば、この値上がった分だけ 値上がり益 (譲渡益やキャピタルゲインとも言います) が出るわけだ。 そして更に下の表のように2023年の年末までに分配金も、米国で税金10%を引かれた後の手取り額で 約975ドル(約97,500円) も受け取れる。 |
分配金(税引後) | |
2019年 | 約180ドル |
2020年 | 約187ドル |
2021年 | 約195ドル |
2022年 | 約202ドル |
2023年 | 約211ドル |
合計 | 約975ドル |
なるほど。 ということは、値上がり益2,167ドルと分配金975ドルを合わせて 約3,142ドル(約314,200円) も利益が出たということか。2019年に100万円で始めたNISAで、2023年の年末までに約314,200円も利益が出せたなんてすごいね。で、そしたらそのあとはどうするのかな? |
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2023年末時点で下記2つから選ぶことになる。 1、売却して利益を確定させる。 売却しない限りは自然と2が選ばれる。 |
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うーん、それ以降は非課税で運用できないのは残念だね。 | |
そうだね。今後の法改正によって何だかの形で延長されるとは思うけどね。けど現時点の法律でも、2027年末までは非課税運用を続けようと思えばできる。今回の例の場合なら2023年末までそのまま運用を続けるのではなく、2022年末時点でロールオーバー (rollover=先送り) をすればいいんだ。 ロールオーバーはWEB上で手続きできる。 |
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ロールオーバー?なにそれ? | |
今回の例では、2019年に1万ドルで購入したVDC80株が、2022年末には 11,699ドル(約117万円) に値上がりしていた。 そして2022年末にロールオーバーすると、2023年の通常NISA口座の非課税購入枠(120万円)でこのVDC80株を購入したという扱いになる。2023年に通常NISA口座で購入したものは2027年末まで非課税運用となるので、結果的に2019年から2027年末まで9年間非課税で運用できることになるんだ。 |
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なるほど、難しいなそりゃ。 ん? 今回は2022年末に約117万円に値上がりしていたから、2023年の通常NISA口座の非課税購入枠(120万円)の範囲内でそれを購入できたからよかったけど、2022年末時点で例えば130万円に値上がりしちゃってたらどうなるの? |
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そこが問題なんだよね。 答えとしては、120万円を超えちゃっている分は通常NISA口座にロールオーバーできない。なので130万円に値上がりしちゃっていたら、そのうちの120万円分は通常NISA口座にロールオーバー、残りの10万円分は課税口座に移換される。 実は非課税期間終了時 (購入から5年目の年末) にロールオーバーする時に限っては、120万円を超えちゃっていても全額ロールオーバーできるんだ。 例えば2016年に100万円で購入したETFが、非課税期間終了時である2020年末に130万円に値上がりしちゃっている場合なら全額ロールオーバーできる。 (措置法第37条の14より) けれど2019年に購入した場合は非課税期間終了時は2023年末。現在の法律だとロールオーバーができるのは2022年末が最終なので、2023年末はそもそもロールオーバーができないんだ。整理すると下の表のとおり。 |
◆2016年に購入した運用商品が120万円超(例えば130万円)に値上がりしていても全額ロールオーバー可能か?
非課税期間終了時点(2020年の年末)にロールオーバーする場合 |
可能 |
非課税期間終了時よりも前(例えば2019年の年末)にロールオーバーする場合 |
不可 ※120万円を超えた分は通常の証券会社の口座(課税口座)に移管される |
◆2019年に購入した運用商品が120万円超(例えば130万円)に値上がりしていても全額ロールオーバー可能か?
非課税期間終了時点(2023年の年末)にロールオーバーする場合 |
ロールオーバーができるのはそもそも2022年末までなので不可 |
非課税期間終了時よりも前(例えば2022年の年末)にロールオーバーする場合 |
不可 ※120万円を超えた分は通常の証券会社の口座(課税口座)に移管される |
はあ、もう難しすぎてよくわからない・・・。 | |
本当にそうだよね。金融庁は失礼ながらセンスがなさすぎると思う。シンプルに ロールオーバーはいつ行っても全額可 にすればいいと思うのにね。いずれにしても今後なにかしら法改正があると思うので、改正されたら追記します。 |
手順5 2027年の年末に売却
では2022年末にロールオーバーして2027年末まで運用した場合の結果を。今回のシミュレーションでは基準価額が年4%ずつ上昇していったという仮定なので、それまでは下の表のように値上がっていく。 |
基準価額(年4%ずつ上昇) | ||
1株あたり | 80株あたり | |
2019年 | 約125ドル | 約10,000ドル |
2022年末 | 約146ドル | 約11,699ドル |
2027年末 | 約178ドル | 約14,233ドル |
2019年に購入した時点では80株で約10,000ドルだったのが、2027年の年末時点では約14,233ドル。ということは 約4,233ドル(約42万円) も値上がりしたということか。 これとは別に分配金も受け取れたんだよね? |
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そうだね。2019~2027年に受け取れた分配金は米国での税引後で 約2,160ドル(約22万円)だ。 |
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なるほど。ということは2027年の年末までに、値上がり益と分配金を合わせて約64万円も利益が出せたわけだね。 | |
そうだね。2027年末の選択肢は ・証券会社の課税口座に移管し2028年以降も運用を継続する の2択になる。 なお、売却しなければ自動的に課税口座への移管になる。課税口座に移管された後に売却したとしても、通常NISA口座で運用中に値上がった分は非課税になる。 |
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なるほど。 じゃあ2027年の年末に慌てて売却しなくてもOKということだね。 |
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そうだね。 売却時は前ページでも取り上げていたように売却手数料がかかる。SBI証券の場合は 売却手数料 約定代金は今回は約14,233ドルなので 売却手数料 ただし売却手数料は上限が20ドルなので、この場合も20ドルになる。 |
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なるほど。 そのほかには何か必要か手数料ってあったっけ? |
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ああ。売却して得たドルを円に換える時に、再び為替手数料がかかる。 | |
たしか1ドルあたり4銭だったよね? 今回は分配金で得たドルと、2027年の年末に売却した時に受け取ったドル、合計約16,400ドルを円に換えるんだから 為替手数料 だね。今回は約64万円も利益が出せているんだから、なんてことない額だね。 |
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そうだね。 今回のシミュレーションは以上です。 あくまでシミュレーションなのでこの通りうまくいくとは限らない。それに今回は為替レートが常時 「1ドル=100円」 で推移したと仮定していたけど、もしも円高が進んでしまうと利益がどんどん減少していってしまう。けれどこれだけ利益が出ているんだから、よほど運用がうまくいかなかったり、歴史上ないくらいの異常な円高にでもならない限りは、元本割れはしないと思う。 |
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なるほど。 | |
では長かったけど、ここまで読んでくれてありがとうございました。 | |
おつかれさまでした~ |