個人型確定拠出年金に加入後のシミュレーション3

記事更新日:2016.12.20

60歳になった時の選択肢は3つ

さて前ページの続きを。
えーと、伊藤さんは35歳で個人型確定拠出年金に加入し、60歳になるまでの25年間、掛金を毎月23,000円ずつ拠出し、総額で690万円も拠出したんだよね。
そうだね。
60歳になると掛金の拠出ができなくなると同時に、それまでに築きあげた年金資産を老齢給付金として受け取ることができるようになる。
伊藤さんの60歳時のステータスは以下のとおり。


◆伊藤さんが60歳になった時のステータス
運営管理機関(加入した金融機関) A銀行
プラン 25年間、元本保証の定期預金プランを選択し続けた
(掛金全額を定期預金で運用し続けた)
掛金総額 690万円
運用益 10万円
年金資産 ウ(ア+イ) 700万円


ふむふむ。年金資産が700万円になったね。そしたらこの700万円を一気にガツンと受け取れるのかな?
もちろんそれもできる。下記のように3つの選択肢があるんだ。


◆伊藤さんが60歳になった時の選択肢
① 一時金で受け取る 老齢給付金として年金資産700万円を一括で受け取る
② 年金(分割)で受け取る 例えば、毎年70万円ずつ10年間かけて受け取る
③ 運用だけ続ける 年金資産700万円をもっと増やすべく運用を続ける


① 老齢給付金を一時金で受け取る

これはもうそのままだけど、老齢給付金として年金資産を一時金(一括)で受け取ってしまう方法。今回の伊藤さんの場合なら、700万円を一括で受け取ることができる。

伊藤さんは退職一時金のない会社員だったので、退職時に勤め先からは退職一時金を受け取れない。けれどこの一時金受け取りを選択すれば、個人型確定拠出年金を利用して自分で退職一時金を作ったということになる。
なるほど、それは気分がいいね。
そうだね。それに気分だけでなく、退職一時金のない会社員の場合は税制面でも有利になりやすいんだ。
個人型確定拠出年金で積み上げた年金資産を一時金で受け取る時は退職所得控除が使える。
今回の伊藤さんの掛金拠出期間は35歳から60歳までの25年間。
掛金拠出期間が20年以上の場合の退職所得控除の計算式は


800万円+70万円×(掛金拠出期間-20年)


よって今回の伊藤さんの場合は


800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円


となり、1,150万円までは非課税となる。
よって伊藤さんも1円も税金がかかることなく年金資産700万円をまるまる受け取ることができるんだ。


※退職一時金のある会社員の場合は、個人型確定拠出年金から一時金を受け取るとタイミング次第では多額の税金がかかってきてしまう可能性があります。これについては後日別のページで取り上げたいと思います。

なるほど、ますます気分がいいね。
700万円でなく、先生の妄想の2,000万円を一時金を受け取る場合だと、税金はかかるのかな?
妄想じゃなくて構想だよ。
計算式は割愛するけど、この例の場合だと一時金が1,150万円までだったら非課税、それ以上だと税金がかかってくる。ちなみに2,000万円を一時金で受け取る場合だと、所得税と住民税を合わせて約86万円税金がかかってくる。なので実際に受け取れるのは約1914万円になる。
なるほど。


② 老齢給付金を年金(分割)で受け取る

老齢給付金として年金資産を年金、つまり分割で受け取ることもできる。
一般的には5~20年の有期年金が選択可能になっている。
(終身年金で受け取る方法については別ページで)
例えば今回の伊藤さんの場合は、下記のような選択肢がある。


5年 有期年金 年金資産700万円を毎年140万円ずつ、5年間かけて受け取る
10年 有期年金 年金資産700万円を毎年70万円ずつ、10年間かけて受け取る
20年 有期年金 年金資産700万円を毎年35万円ずつ、20年間かけて受け取る

※上記は均等払い方法の場合。均等払いでなく年単位で5~50%の中から取崩割合を決める割合指定方法という方法もあります。


ん?
有期年金って個人年金保険コーナーで見た時、たしか

決められた期間(10年有期年金なら10年間)を上限に、生存している限りは受け取れる年金

だったよね?
ということは、例えば「10年 有期年金」を選択して7年分(490万円)を受け取った時点で亡くなってしまったら、残りの3年分(210万円)はどうなっちゃうの?
個人型確定拠出年金の場合は、残りを遺族が一時金で受け取ることができるんだ。
なんだ、よかったあ。
あと、個人年金保険の場合は、一時金で受け取るよりも年金で受け取る時のほうが受取総額は大きくなっていたよね?たしか年金を受け取っている間も、残っている資金を運用し続けるからっていう理由で。
そうだね。
それは個人型確定拠出年金も同じだ。年金受取(分割取崩)を選択した時は、年金を毎年受け取りつつ、残っている資産は運用しつづけることができる。超低利率な定期預金プランで運用する場合であればほとんど額は変わらないけれど、投資信託などのハイリスクな方法で運用する場合は、多大な運用収益が発生して受取総額が大きく増額することもあるし、逆に運用に失敗し受取総額が減ってしまうこともある。

例えば伊藤さんが60歳時に「10年 有期年金」を選択し、毎年70万円ずつ10年間かけて受け取ることにしたとする。ところがその後、外国株式投資信託での運用を実践するもうまくいかず資産が減ってしまった。すると「70万円ずつ」という予定だったのが「65万円ずつ」に変更になってしまったりするんだ。
なるほど。


一時金と年金は併用可能

年金資産の一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取るという併用も可能なんだ。
じゃあ伊藤さんの場合であれば、

「年金資産700万円のうち、500万円は一時金で受け取り、残り200万円は毎年40万円ずつ5年間かけて受け取る」

・・・なんてこともできるわけか。
そうだね。


③ 運用を続ける

60歳になると老齢給付金を受け取ることができるようになるけど、あえて受け取らずに年金資産全額を運用しつづけることも可能なんだ。


※掛金の拠出はせず運用だけをする人を、個人型確定拠出年金では運用指図者(うんようさしずしゃ)といいます。逆に掛金を拠出し運用もする人を、加入者といいます。


そして好きなタイミングで老齢給付金を請求することができる。例えばだけど、64歳までは給付金を一切受け取らずに運用し続けて、65歳になったら年金資産全額を一時金でガツンと受け取る・・・なんてことが可能なんだ。
なるほど。最長でいつまで運用は可能なの?
70歳になるまでだ。老齢給付金の請求も70歳になるまでにしないといけない。それまでに請求しなかった場合は、自動的にその時点での年金資産を一時金で受け取ることになる。
なるほど。


どの選択肢がベストか?

しかしこれだけ選択肢があると、どれがベストなのか迷うなあ。
そうだね。
どれがベストかは本当にケースバイケース。
60歳になった時に、たまたまリフォームなどでまとまったお金が必要だったら一時金で受け取ればいいし、運用に自信があるのなら年金資産全額を運用し続けるのもよいと思う。
じゃあその時になったら考えればいいか!
そうだね。
次のページでは、伊藤さんが60歳時に年金資産700万円を一時金で受け取ったとして、加入してから一時金を受け取るまでの利益がいくらだったか?運用利率はどれくらいだったか?
について見ていくよ。