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老後の月収をUPさせるには?その2 (片働き夫婦・自営業)

記事更新日:2018.10.1

毎月の不足額を確認

さて、前回の続きを。
老齢年金を70歳に繰り下げ受給するとして、それでも足りない分をどう準備するか?っていう話だったよね。
そうだね。まずは今回の例の夫婦の不足額を下の表に整理してみた。


◆夫婦の老齢年金を70歳から繰り下げ受給した場合
年齢 夫の月収 妻の月収 夫婦合計月収 毎月の不足額
65~69 0 0 0 26万円
70~84 92,300 102,200 194,500 約6.5万円
85~89 102,200 102,200 約6万円


夫婦2人時代の必要月収は26~33万円を目安っていう話だったから、65~69歳の間は毎月26万円の不足。70~84歳の間は毎月約6.5万円の不足。
84歳で夫が亡くなり妻が単身者となってからは、必要月収16~21万円を目安っていう話だったから、毎月約6万円の不足ってことだね。
そうだね。
この夫婦が不足額をカバーするために老後に向けてどう備えるとよいかを見ていくよ。自営業者の場合は下記4つが有力候補になる。


国民年金の付加年金
国民年金基金
iDeCo(個人型確定拠出年金)
小規模企業共済


それぞれについてまずは簡単に見ていくよ。


自営業者のための年金制度など

国民年金の付加年金
掛金月額400円で加入可能。
費用対効果はもはや反則レベル。例えば30歳から60歳まで加入した場合、掛金総額は144,000円。これで65歳からは終身年金
(生存している限り受け取り続けることができる年金)
として、毎年72,000円を受け取れる。
老齢基礎年金を70歳に繰り下げ受給した場合は、付加年金も繰り下げ&増額され、70歳から毎年約102,000円受け取れる。
仮に84歳まで生存した場合、受取総額は約143万円。掛金総額が14万円くらいなのに、受取総額が143万円というのは反則レベルかと・・・。
掛金は全額が社会保険料控除の対象。
国民年金基金
給付タイプは様々だが、例えば30歳男性が終身年金A型に加入し、60歳まで掛金月額10,170円を納め続けた場合、65歳からは生存している限り毎年24万円を受け取れる。
仮に84歳まで生存した場合、受取総額は456万円。掛金総額は約366万円だが、掛金は全額が社会保険料控除の対象になり、掛金の15%分(※)は税金(所得税+住民税)が安くなるため、実質約310万円になる。

※年収500万円くらいまで(課税所得195万円以下)の人の場合

終身年金がある点や、将来の受取額が確定していてわかりやすい点がメリット。配当がないためインフレには弱い点と、付加年金と同時加入できない点がデメリット。

◆参考リンク:インフレと保険
iDeCo
他の3つとは異なり、加入者が運用方法を自分で選択する。将来受け取れる年金額は運用結果次第で増減する。そのため、運用がうまくいけば年金額が大きくなる可能性がある一方、運用に失敗したら元本割れの可能性もある。株式などの一般的にインフレに強い運用方法を選択可能なのでインフレに強い点、付加年金と同時加入できる点などがメリット。投資のスキルや経験が必要なため、難しい点がデメリット。

掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になり、掛金の15%分(※)は税金(所得税+住民税)が安くなる。

※年収500万円くらいまで(課税所得195万円以下)の人の場合
小規模企業共済
給付タイプは様々だが、例えば30歳男性が掛金月額1万円で加入し、65歳まで掛金を納め続け65歳で事業を廃業した場合、退職金として一括で約505万円を受け取れる。一括でなく10年分割受取や15年分割受取も選択可能だが、終身年金は選択不可
掛金総額は420万円だが、掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になり、掛金の15%分(※)は税金(所得税+住民税)が安くなるため、実質約357万円になる。

※年収500万円くらいまで(課税所得195万円以下)の人の場合

配当(付加共済金という名称)があるため、国民年金基金と比較するとインフレに強い点や、確定拠出年金よりも内容がわかりやすく簡単な点、付加年金と同時加入できる点などがメリット。
終身年金がない点があくまで個人的にですがデメリット。


なるほど。うーん、これはどれがいいのかわからないなあ。
付加年金はすごいと思うけど、これだけじゃ不足分はまだまだカバーできないし。残りの3つは一長一短という感じだよね。インフレに強くて、簡単で、終身年金を選択できるっていうのがあればいいのに。
そうだね。これら4つをどう組み合わせるといいかは、


・事業を子供に後継ぎさせる予定か?後継ぎさせるならいつか?
・インフレを気にするかしないか?
・投資スキルがあるか?
・遺産を残してあげたい子供や親族がいるか?


などによって変わってくるため、本当にケースバイケースだと思う。
うーん、難しいね。それに後継ぎさせるかどうかとかも、その時になってみないとわからないよね?
そうだね。そこでどうすればよいか迷った場合は


①付加年金+小規模企業共済
or
②付加年金+iDeCo
or
③付加年金+小規模企業共済+iDeCo


というのを個人的には推奨したい。
ここでは①の方法で見ていきたいと思う。
(②はこちらのページで取り上げています)

掛金は会社員の厚生年金保険料や退職金を参考にするのがよいと思う。
会社員の厚生年金保険料や退職金を参考にする?
どういうこと?
そうだね、それを詳しく。
まず国民年金は20~60歳の人が全員加入となっているので、自営業者も会社員ももちろん加入し、全員が国民年金保険料を払っている。
うんうん。
そして会社員は国民年金の上乗せとして厚生年金にも強制加入していて、厚生年金保険料を毎月払っている。これにより、老後は老齢厚生年金という年金を受け取れる。
また多くの企業が退職金制度
(退職一時金 or 退職年金)
を導入していて、入社時から退職金を積み立てている。
老齢厚生年金も退職金も、老後の生活費を支える大きな武器になっている。

つまり国民年金だけが強制加入の自営業者と比べると、
大半の会社員は老後のために強制的に大金を積み立てている
ということになる。


◆自営業者が強制されている老後のための積立
  国民年金のみ

◆大半の会社員が強制されている老後のための積立
  国民年金、厚生年金、勤務先の退職金制度


この
「厚生年金+退職金」
の代用として、
「付加年金+小規模企業共済」
を利用する。そして付加年金と小規模企業共済に払う掛金の額は、会社員が国民年金の上乗せとして毎月払っている金額と同程度にするといいと思う。
なるほどね。確かにそれなら平等という感じだね。じゃあ会社員は厚生年金と退職金のために、毎月いくら払っているんだろう?


会社員は厚生年金と退職金の積立に毎月いくら払っているか?

厚生年金保険料(月額)は標準報酬月額と標準賞与額に保険料率をかけた額になる。言葉は難しいけれど、平均月収に保険料率をかけた額とほぼ同じになる。保険料率は徐々に上昇しているけれど、平成29年以降は18.3%で固定されている。
おおよそだけど、平均月収41万円くらい(年収500万円くらい)の人の平成29年以降の厚生年金保険料(月額)は、


41万円(平均月収)×18.3%(保険料率)
75,000円


になる。


続いて退職金のための積立金。これは企業規模などによってだいぶ差はあるけれど、平均するとざっくりだけど月額2万円くらいは毎月積立していっている。
年収500万円くらいの会社員って、厚生年金保険料75,000円、退職金のための積立を2万円、両方で毎月95,000円も払ってるの!?
そうだね。
ただし厚生年金保険料は会社と従業員が半分ずつ負担する(労使折半)ので、従業員が実際に払っているのは半額の37,500円だ。
それに退職金のための積立は会社が全額負担のケースが多く、従業員は1円も払っていないことが多い。
そうなんだ。会社員ってずるいね。
いや、そうともいえないよ。会社は会社負担分を考慮して従業員に支給する給料を決めているんだから、結局は従業員が負担しているともいえると思うから。
あー確かに。
ということで、会社員の毎月の負担額は下の表のとおり。


◆会社員家庭の毎月の負担額
(夫は年収500万円くらいの会社員。妻は専業主婦。会社負担分も含める。)
夫の国民年金保険料 0円
妻の国民年金保険料 0円
夫の厚生年金保険料 75,000円
退職金のための積立金 20,000円
合計 95,000円

※夫の厚生年金保険料に含まれている


一方の自営業家庭の場合は下記のとおり。


◆自営業仮定の毎月の負担額
(夫は自営業者。妻は専業主婦。)
夫の国民年金保険料 近年は16,500円程度
妻の国民年金保険料
合計 33,000円
会社員より62,000円少ない


なるほど。となると、毎月の負担額を会社員と同じくらいにするとなると、62,000円くらいを付加年金と小規模企業共済の掛金に充てるのがよさそうということだね。
そうだね。付加年金の保険料月額は1人400円、夫婦で800円なので、小規模企業共済に毎月6万円くらいを掛ければ、毎月の負担額が会社員と同程度になる。


◆毎月の負担額
会社員家庭 自営業家庭
夫の
国民年金保険料
0 16,500
妻の
国民年金保険料
0 16,500
夫の
厚生年金保険料
75,000
退職金のための積立金 20,000
夫婦の
付加年金保険料
800
小規模企業共済の掛金 60,000
合計 95,000円 93,800円


なるほど。これだと負担額がほぼ同じになるね。
じゃあ実際に、自営業家庭がこのように付加年金と小規模企業共済に加入すると、老後にどんな風にお金を受け取ることができるんだろう?
そうだね。それを見ていくよ。


付加年金と小規模企業共済に加入すると、老後にどのようにお金を受け取れるか?

今回は先ほどの例の夫婦が現在30歳だったとして


・夫婦共に60歳まで付加年金に加入する
・夫が65歳まで小規模企業共済に加入し、掛金月額6万円を掛け続ける。


というケースで考えてみる。
ういす。
まずは付加年金だけを加えた場合のシミュレーションから。下の表のようになる。


◆夫婦の「老齢年金+付加年金」を70歳から繰り下げ受給した場合
年齢 夫の月収 妻の月収 夫婦合計
月収
老齢
基礎年金
付加
年金
合計 老齢
基礎年金
老齢
厚生年金
付加
年金
合計
65~69 0 0 0 0 0 0 0 0
70~84 92,300 8,500 約10万円 92,300 9,900 8,500 約11万円 約21万円
85~89 92,300 9,900 8,500 約11万円 約11万円


なるほど。付加年金8,500円が加わるだけでもだいぶ違うね。
そうだね。
続いて小規模企業共済。
今回は30歳から65歳まで35年間、掛金月額6万円を掛け続けてきたので、掛金総額は


6万円×35年(420ヶ月)=2,520万円


にもなっている。
すごい額だね!
そうだね。
そして小規模企業共済は、積み立てたお金を退職金として受け取ることができるんだけど、退職金の受け取り方を柔軟に選択できるのが大きなメリットなんだ。例えば今回の夫が65歳で自営業を廃業することにした場合、下記のような受け取り方が可能だ。


◆一括受取

一括で約3,030万円を受け取る


◆10年分割受取

1ヶ月あたり約26.5万円を10年間受け取る。受取総額は約3,180万円


◆15年分割受取

1ヶ月あたり約18万円を15年間受け取る。受取総額は約3,270万円


◆一括受取と分割受取の併用

(例)まず一括で1,000万円を受け取る。残りを15年分割で1ヶ月あたり約12万円ずつ受け取る。

なるほど、これは便利だね。
そうだね。試しに15年分割受取を選択した場合は下記のようになる。


◆夫婦の「老齢年金+付加年金」を70歳から繰り下げ受給した場合
年齢 夫の月収 妻の月収 夫婦合計
月収
老齢基礎年金

付加年金
小規模企業共済
退職金

(15年分割受取)
合計 老齢基礎年金

老齢厚生年金

付加年金
合計
65~69 0 18万円 18万円 0 0 18万円
70~79 10万円 18万円 28万円 11万円 11万円 39万円
80~84 10万円 10万円 11万円 11万円 21万円
85~89 11万円 11万円 11万円


なるほど。70~79歳の夫婦合計月収がすごいことになってるね。夫婦2人時代の必要月収の目安(26~33万円)を大幅に上回っているね!なんかこれだけでもやっていけそうにも見えるなあ。
そうだね。
80歳以降の月収を増やしたいというのであれば、65歳時に小規模企業共済から退職金を受け取る時に「一括受取と分割受取の併用」を選択し、一括受取した分を利用して終身年金タイプの個人年金保険に加入するというのもアリだと思う。
例えば今だったらJA共済の個人年金保険に、


・一時払い保険料500万円
・終身年金(15年保障付き)
・75歳から受取開始


という条件で加入すると、75歳からは亡くなるまで毎月約25,000円(※)を受け取り続けることができる。もちろん保険の保障内容は販売時期によって大きく変わってくるので、65歳時にいざ退職金を受け取ることになった時に、その時点で販売されている個人年金保険で見積もりをとり、退職金の具体的な受け取り方も決めるとよいと思う。

※6年目以降の予定利率が最低保証利率(0.75%)で推移した場合
なるほど。
それでは最後に本コーナーのまとめを。

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