一時払い変額終身保険 仕組みとメリット・デメリット

記事作成日:2018.2.7

一時払い変額終身保険は名ばかり?

それでは続いて、契約時にすべての保険料を一括で払い込む
一時払い変額終身保険
について詳しく。
ういす。
例えば下記のような一時払い変額終身保険があったとする。


◆とある一時払い変額終身保険

被保険者:60歳男性のCさん
保険期間:終身(一生涯)
基本保険金額(死亡保険金の最低保証額):1,000万円
一時払い保険料:1,000万円

えーとこれは、契約時に1,000万円を払うと、その後はいつ亡くなってしまったとしても、遺族が最低でも1,000万円の死亡保険金を受け取れるという契約かな?
そうだね。
契約時に1,000万円もの大金を払える方なんてそうはいない。
1番多いのは退職金をもらったばかりの方だ。

このような一時払いの保険は銀行の窓口で主に販売されている。
高額な退職金が口座に振り込まれると銀行が顧客に勧めてくるわけだ。



「退職金を運用しませんか?」

「亡くなってしまった時には払った一時払い保険料と同額を最低でも受け取れるのですから元本割れはしません。」

「大きく増える可能性もあります!」



恐らくこんな感じでね。
うーん、こう言われると魅力的に聞こえて加入したくなりそうだなあ・・・。

で、実際のところどうなの?
率直に言うと、これもおすすめできる方はほとんどいないかな。

1番の理由は難しすぎるから
保険は難しいものが多いけど、その中でもトップクラスに難しいと思う。
私でも正確に理解しているかどうか怪しい商品がいくつもあった。


為替手数料為替リスク株式債券投資信託ETF信託報酬円高円安レバレッジ市場価格調整デリバティブ取引リフティングチャージ


少なくともこれらの用語を理解している方でないと、この保険を理解するのは難しいと思う。そしてこの保険に限ったことではないけれど、
自分が理解できない保険は絶対に加入しない方がいいと思う。
たしかに。あとから
「こんなはずじゃなかった」
なんてことになりかねないもんね。
そうだね。
そして理解した人であれば、この保険に入りたいと思う人はほとんどいないはず。
銀行でこのような保険に加入する方の多くは、退職金を増やしたいと思って加入するはずだ。その目的であればこの保険はおすすめできない。
手数料が純粋な投資信託と比較して高いからだっけ?
それもそうなんだけど、もっと大きな理由がある。

おさらいだけど、前ページで見た
「保険料を月払や年払で払っていくタイプの変額終身保険」
は、保険料を払う度に保険会社が手数料を差し引き、残りを加入者が選択した運用方法
(投資信託など)
で運用していくというものだった。
うん。一時払い変額終身保険も同じなんじゃないの?
違うんだ。
私が知る限り、近年主に発売されている一時払い変額終身保険は、変額というのは名ばかりで、実際には
一時払い定額終身保険
に近いものが多いなんだ。
どういうこと?
定額保険は、主に国債で保険会社が保険料を運用しているんだったよね?
そうだね。なので一時払い定額終身保険は下の表のように運用される。


一時払い定額終身保険
加入者が一時払い保険料を払う。

保険会社が初期手数料を差し引き
残りを主に国債で運用する。


うんうん。で、一時払い変額終身保険だと?
例えば今回のCさんのように一時払いで1,000万円を加入時に払った場合。
保険会社は受け取ったお金から初期手数料(※)をまず差し引く。ここまでは一時払い定額終身保険と同じだ。


※この手数料があまりに高額で批判を浴びたことから、近年は初期手数料無料の商品が多くなってきたように思います。あくまで紙面上ですが・・・。



そして残りのお金をすべて投資信託で運用するのではなく、
定額部分(主に国債で運用する部分)

変額部分(主に投資信託で運用する部分)
に分けて運用するんだ。


一時払い定額終身保険 一時払い変額終身保険
加入者が一時払い保険料を払う。

保険会社が初期手数料を差し引き
残りを主に国債で運用する。
加入者が一時払い保険料を払う。

保険会社が初期手数料を差し引き
残りを定額部分変額部分に分ける。

定額部分は主に国債
変額部分は主に投資信託
それぞれ運用していく。


そして、割合としては定額部分が圧倒的に大きく、約80%以上は定額部分という保険ばかりだ。
なるほど。
ということは、初期手数料は考えないとすると、一時払い保険料1,000万円を払ったら、そのうちの800万円以上は定額保険と同じように国債で運用され、残りの200万円未満だけが投資信託などのハイリスクハイリターンな運用商品で運用されるわけか。
これじゃ確かに一時払い変額終身保険というより
一時払い定額終身保険+オマケでちょっと変額
って感じだね。
けどなんでこんな仕組みになってるの?


定額部分で元本を確保し、変額部分で上乗せ利益を狙うが・・・。

理由は明白で、このようにすることで一定期間後に解約をしても元本割れしないようになっているんだ。

一時払い変額終身保険は亡くなってしまった時には確かに元本割れしないけど、解約した時には元本割れの可能性がある。特に加入してから数年以内に解約すると5~10%程度は解約控除(解約手数料)がかかることが多いので、大きく元本割れしやすい。
けれどこのように定額部分を設けることで、10年や15年といった一定期間後に解約すれば最低でも元本と同額の解約返戻金を受け取れるので、元本割れしないようにできる。

例えば先ほどの一時払い保険料1,000万円の保険の場合。
定額部分の800万円を国債で年利1.5%で運用したとする。
すると15年後には約1,000万円になる。
なるほど。定額部分の運用だけで、15年後には一時払い保険料と同額の1,000万円を作るわけか。
そうだね。
そして残りの変額部分200万円を投資信託で運用する。
投資信託は定額部分と異なり金利は固定されていないので、実際に何%で運用できるかは加入時にはわからないけど、仮に年利5%で運用できたとすると15年後には約420万円
年利1%でしか運用できなかったとすると15年後には約230万円だ。


定額部分の800万円
主に国債で運用する
変額部分の200万円を投資信託で運用する
年利1%でしか
運用できなかった場合
年利5%
運用できた場合
年利1.5%で運用したとして
15年後には1,000万円になる
15年後には230万円

定額部分と合計すると
1,230万円

15年後に解約すれば
解約返戻金1,230万円
受け取れる
15年後には420万円

定額部分と合計すると
1,420万円

15年後に解約すれば
解約返戻金1,420万円
受け取れる


なるほど。
定額部分の運用だけで確実に一時払い保険料と同額の1,000万円を確保し、変額部分で上乗せ利益を作るわけか。
そうだね。
元本と同額ではなく、元本を上回る額を確保するように作られている保険もある。
例えば元本の110%(今回の例なら1,100万円)を確保する保険もある。
なるほど。
こう見ると合理的でよい保険のようにも思うけど。
けどこんなにうまくいくもんなのかな?
定額部分に日本国債、変額部分に通常のインデックスファンドという正攻法な組み合わせでは、もはやかなり難しくなったと思う。
保険会社の手数料がかなり差し引かれる上、日本国債の金利はこちらのページのとおり、40年ものの超長期国債でも近年は1%程度まで低下してしまっているから。


そこで保険会社も近年は、正攻法では増やすことが難しいことから、定額部分を高金利な米国債オーストラリア国債で運用したり、変額部分をスマートベータレバレッジを採用した投資信託で運用する保険(※)を販売しだしてきている。


マニュライフ生命「未来を楽しむ終身保険」や、三井住友海上プライマリー生命の「えがお、ひろがる」など。



外貨建て
一時払い変額終身保険
変額部分をスマートベータレバレッジを採用した投資信託で運用する
一時払い変額終身保険
定額部分の運用に
低金利な日本国債でなく、
高金利な米国債
オーストラリア国債を利用。
少ない資金で高運用を狙う。
例えば変額部分100万円でもレバレッジ3倍なら
300万円を運用しているのと同等になる。


スマートベータって?
詳しく話すと長くなるけど、通常のインデックスファンドで使用されている指数
(=インデックス)
を改造し、より高い利益が出せるようにした指数のこと。
そしてスマートベータに連動するように運用される投資信託は
スマートベータ型投資信託などと呼ばれている。

過去のデータを基に、より高い利益が出せるように改造してあるので、当たり前だけど

「もしも過去にスマートベータで運用していた場合の成績」

は、通常のインデックスファンドの過去の成績よりも良いものになっている。
すごいじゃん。
いや、あくまで
過去なら良い成績を出せた指数
であって、今後実際に運用しても好成績になるかはわからない。

極端な例を言うと、過去5年間の平均打率は2割5分くらいだけど、巨人戦だけは3割を打ってきたバッターがいたとする。
平均打率がインデックス、巨人戦だけに絞った打率がスマートベータだ。

で、じゃあ来年からは巨人戦以外は出場しないようにすれば3割を打てるかっていうと?
そりゃわからないよね。
そうだね。
スマートベータも同じだ。
スマートベータ型投資信託は、本格的に運用され始めたのは2010年以降というまだまだ年数が浅いものだから、まだ評価はできないかな。


一時払い変額終身保険のパンフレットを見ると、


過去にもしも変額部分をスマートベータ型投資信託で運用していたとしたら、こんなに資産が増えました!


っていうシミュレーションが記載してあるのが目立った。
これを鵜呑みにしてしまうのは危険かなと思う。

それにもし今後も通常のインデックスファンドよりも良い成績を残せ年利10%近くを達成できたとしても、個人的にはそれほど魅力的ではないかな。というのも、そもそも私がNISAで購入している海外ETF(上場投資信託)は、長期間に渡って実際に運用されて年利8~10%近い成績を残しているから、それで十分かなと思うから。
たしかに。
1,000万円をこの保険でなく海外ETFの購入に全額充てて、もしも年利10%で運用できたら・・・。
えーと、1.1×1.1×・・・
15年後には4,400万円くらいになるじゃん!
夢があるなあ。
そうだね。
実際には分配金を受け取る度に税金を引かれてしまうので、そこまでは増えないと思うけど、その方法もいいと思う。
私が今もし手元に余裕資金が1,000万円あったらそうすると思うな。

けれど可能性は低いとはいえ、もしかしたら1,000万円を切って元本割れする可能性もある。

それを避けたいのであれば、この保険のように国債と投資信託に分けて運用してみるのもアリだと思う。私なら定額部分は自分で米国債オーストラリア国債を買い、変額部分は海外ETFを買うかな。


定額部分 変額部分
一時払い変額終身保険の定額部分を
米ドル建て(主に米国債)で運用した場合の
積立利率は、適用期間10年の場合で1~1.5%(※1)

自分でネット証券会社で
10年ものの米国債を購入すれば
2~2.5%程度(※1)と明らかに高い。
変額部分をスマートベータ型投資信託で
運用する一時払い変額終身保険なら
通常のインデックスファンドを上回る
成績を出し続けられる可能性あり。

自分でネット証券会社で
海外ETFを購入すれば、
そもそもインデックスファンドを
上回る8~10%近い運用成績が
期待できるのでこれで十分。

※海外ETFは元本保証商品ではないため購入の際は自己責任でお願いします。
※1 2018年2月現在の値。時期によって変動はしますが、自分で購入時のほうが大幅に高金利であることは間違いありません。


なるほど。自分でやったほうが好成績が期待できそうだね。
そうだね。
なのでこの難しい保険を理解できるくらいの方なら、ご自身で外国債や海外ETFなどを組み合わせて運用されることを推奨します。
ということで一時払い変額終身保険についてはここまで。
ここまで読んでくれてありがとう。
お疲れさまでした~