肝臓がん対策3 B型・C型慢性肝炎の治療方法と費用
記事作成日:2015.12.26
B型とC型では治療の基本方針が異なる
HBs抗原検査やHCV抗体検査の結果、B型・C型肝炎ウイルスへの感染が疑われた場合は、肝臓専門医で詳細に診療してもらうことが推奨されているようなんだ。 そして、 感染しているだけで肝炎は発症していない or 肝炎発症済か? などを調べてもらった上で、今後の治療方針が決まるようなんだ。 ただし前ページでも少し触れたように、C型はウイルスを完全排除できる薬があるけど、B型は残念ながらないという決定的な違いがある。そのためB型とC型では下記のように治療の基本方針も異なっているんだ。 |
B型 | C型 | |
ウイルスを完全排除 できる薬があるか? |
なし | あり |
治療の目的 | 肝硬変や肝臓がんの予防 | |
治療の基本方針 | ◆第一優先 薬を服用しなくても、免疫力だけで ◆第二優先 セロコンバージョンへの到達が難しい場合は、 |
肝炎の発症有無にかかわらず、 ウイルス完全排除を目指す。 |
C型肝炎ウイルスの治療方法と費用
C型肝炎ウイルスに感染している場合、多くのケースではウイルスそのものの完全排除を目指す抗ウイルス療法という治療が選択される。 C型肝炎ウイルスにもいくつかタイプがあるんだけど、日本人が多く感染しているのは1b型、2a型、2b型の3つ。そしてそれぞれに対応する新薬が下記のように登場しているんだ。 |
C型肝炎ウイルス | ||||
1b型 | 2a型 | 2b型 | ||
占有率 | 約70% | 約20% | 約10% | |
新薬名 | ヴィキラックス | ハーボニー | ソバルディ | |
製造販売元 | アッヴィ合同会社 | ギリアド・サイエンシズ株式会社 | ||
新薬発売日 | 2015.11.26 | 2015.9.1 | 2015.5.25 | |
用法 | 1日1回2錠を 12週間経口投与 |
1日1回1錠を12週間経口投与(※) | ||
ウイルス完全排除率 (著効率) |
95% | 100% | 96% | |
副作用 | 大きな副作用なし | |||
価格 | 1日分(2錠)で 約53,600円 |
1錠で約8万円 | 1錠で約61,800円 | |
参考リンク | 製造会社公式サイト | 製造会社発売告知 | 製造会社発売告知 |
※ソバルディは既存薬「リバビリン」と併用要
ん?ちょっと待って!2錠で5万円とか1錠で8万円とか書いてあるけど!? じゃあハーボニーだったら、1日1回1錠を12週間(84日)だから、 8万円×84日=672万円!? |
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そうだね。 けれど医療費助成により、毎月1万円 or 2万円(※)までしか自己負担額はかからないんだ。 ※ざっくりですが、年収600~800万円以上の高所得者だと2万円、それ以下の方は1万円になります。 ※後述するB型肝炎ウイルス用のテノホビルは、1回の通院で処方可能な薬剤量が最大で90日分ですが、ハーボニーとソバルディは2015年12月現在、最大で28日分となっています。ヴィキラックスは記事作成時点では14日分まででしたが、恐らく近いうちに28日分に延長されると思われます。 |
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なんだよかったあ。じゃあ12週間(約3ヵ月)だから、合計の自己負担額は3~6万円くらいってことだね。 | |
そうだね。 新薬が登場するまではインターフェロン治療というのが主だったんだけど、週に1~3回の注射を24~72週(半年~1年半)もかけて行う、とても大変な治療だったようなんだ。しかも吐き気や倦怠感などの副作用がとても重く、治療を最後まで完了できない方もとても多かったらしい。 それと比較すると、錠剤を12週間飲むだけで重い副作用もなく、しかもウイルスを完全排除できる確率も高い新薬は、本当にすごいなと思うよ。 |
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ほんとだね。 あ、そういえばウイルスの完全排除に成功したら、肝臓は元通りになるのかな? 胃ガン対策編では、ピロリ菌による胃炎で萎縮してしまった胃は、ピロリ菌除菌後も完全に元通りにはならないという話だったけど・・・。 |
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肝臓はスーパー臓器なんて言われるくらい、人間の臓器の中では強い臓器なんだ。70%を切除しても半年で元通りの大きさに再生してしまうくらいだからね。 なのでピロリ除菌後の胃とは異なり、C型肝炎ウイルス排除後の肝臓は、肝炎によって受けてしまったダメージがどんどん回復していくようなんだ。ケースにもよるけど、5年で50%、10年で80%まで回復するらしい。 |
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そうなんだ。肝臓はすごいね! | |
そうだね。続いてはB型を。 |
B型肝炎ウイルスの治療方法と費用
B型肝炎ウイルスの持続感染者(キャリア)は、下記の①②③の3つに大きく分かれる。 |
①慢性肝炎は未発症だがウイルス量は多い人(HBe抗原陽性) |
経過とともに自然に90%は②へ進行。10%は③へ進行。 ②への進行を誘導するインターフェロン治療が行われることも。 |
②慢性肝炎は未発症でウイルス量も少ない人(HBe抗原陰性) |
ウイルス量が少ない状態を免疫力で保っているセロコンバージョンという状態。 多くのケースでは経過観察のみで何も治療はしない。 |
③慢性肝炎を既に発症してしまっている人 |
ウイルスの増幅を免疫では押され切れずに、慢性的に炎症を起こしてしまっている状態(慢性肝炎) ↓ 免疫力を強化するインターフェロンを注射しセロコンバージョンを目指すインターフェロン治療が第一優先。 ↓ 年齢やウイルス量などからセロコンバージョンへの到達が望めない場合は、第二優先で核酸アナログ製剤を使用しウイルス量が少ない状態を目指す。 |
なるほど。 えーと、②のセロコンバージョン状態はどれくらい続くのかな? |
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基本的には一生涯継続する。この状態が継続する限りは薬を飲む必要もないので、ウイルスの完全排除ができない2015年現在は、セロコンバージョンがB型慢性肝炎の治療の1番理想なゴールとなっているんだ。 ただしごくまれにセロコンバージョンから肝炎を発症することがある。それに前ページでも触れたように、B型は感染中の肝細胞のDNAを直接傷つけることがあるため、セロコンバージョンからでも肝臓ガンの発症率が年0.1~0.4%程度あるらしいんだ。そのため肝炎や肝臓ガンを発症していないかをチェックする検査(腹部超音波検査等)を定期的に実施する必要があるようなんだ。 |
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なるほど・・・。あとそうだな、③になってしまった時、第一優先のセロコンバージョンを目指す治療はどのくらいの成功率なのかな? | |
これは残念ながら10%程度しかないらしい。35歳未満の若年者の場合はまだ成功率が高いらしいけど、35歳以上の場合は成功率が低いため、最初から核酸アナログ製剤を使用した治療が行われることも多いらしいんだ。 | |
そうなんだ・・・。核酸アナログ製剤はどういう薬なの? | |
ウイルス量を減らすことができる飲み薬で、効果は非常に高く、ウイルス量が激減するので、肝炎を抑えることができるようになるようなんだ。 ただし服用を中止すると肝炎が再発してしまうことが多いので、一生涯飲み続けなければいけないことが多いようなんだ。 |
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うーん、なんかネガティブな要素が多くて暗くなるなあ・・・。ウイルスを完全排除できる新薬がつくづく早くできてほしいね・・・。 | |
そうだね、本当にもう少しだと思うので、早く実用化されるよう頑張ってほしいと思うよ。 けれど核酸アナログ製剤も下記のとおり、副作用や費用面が大きく改善されてきているので、そこまで悲観することもなくなってきているんだ。 |
奇形児リスク |
核酸アナログ製剤の主力だったエンテカビル(商品名バラクラード)は、妊娠中に服用すると奇形児の出産率が高くなるリスクがあった。 ↓ 2014年に発売された新薬のテノホビル(商品名テノゼット)では、上記リスクが解消され安全に妊娠可能になった。 |
治療費 |
平成22年3月までは、核酸アナログ製剤は医療費助成の対象外だった。 (肝炎情報センターのサイトより) ↓ 平成22年4月から、核酸アナログ製剤は医療費助成の対象になり、月額1万円(高所得者は2万円)までしか自己負担額がかからなくなった。 ↓ 更に2015年6月から、テノホビルの1回の通院の処方限度量が14日分から90日分に拡大された。 それにより通院頻度が減少したことで、自己負担額も減額可能になった。 (3ヵ月に一度の通院であれば、自己負担額は3ヵ月あたり1万円に) |
なるほど。こうやってみるとたしかにだいぶ改善されてきているんだね! | |
そうだね。 そしていよいよ、ウイルスを完全排除できる新薬はいつ登場するかだけど・・・。 |
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いつなの!? | |
既にあります。 | |
マジで?? | |
ああ、なんと既に研究レベルでは完全排除に成功している薬があるんだ。 2015年4月21日のオーストラリアの学会のレポートで紹介されている。 少々長い英文なので次のページで詳しく・・・。 |