肝臓がん対策1 原因の大半は肝炎ウイルス
記事作成日:2015.12.26
肝臓ガンは劇的な減少が望めるガン
※本ページでは、肝臓ガンの90%以上を占め、狭義の肝臓ガンである肝細胞ガンについて取り上げます。また日本肝臓学会の平成27年度肝がん白書(PDF)などを参考に作成しています。 次は肝臓がん。肝がんとも言われる。2014年の統計では、男性は4番目、女性は6番目に亡くなってしまった方が多いのがこのガンなんだ。まずは下の表を見てほしい。 |
予防 |
かなりできる |
早期発見の可否 |
可能 |
早期発見時の5年生存率 |
1期でも55.9% |
5年生存率が1期でも55.9%しかないのか・・・。けど予防がかなりできるというのは嬉しいなあ。 | |
そうだね。本当に胃ガンと同じくらい劇的な減少が望めるガンだと思うので、ぜひ最後まで読んでほしいなと・・・。まずは原因から。 |
肝臓ガンの原因
ガンの中には原因がハッキリわかっていないものも多いんだけど、肝臓ガンは数あるガンの中でも最も原因がハッキリしている部類なんだ。結論から言ってしまうと、肝臓ガン患者の80%は元々肝硬変(かんこうへん)患者、残りの大部分は肝硬変までは進行していない慢性肝炎(まんせいかんえん)患者であることがわかっている。つまり、どちらでもない人が肝臓ガンを突然発症することはとても少ないんだ。 |
肝臓ガン患者の80% |
肝硬変患者が発症 |
残り20%のうちの大部分 |
肝硬変までは進行していない慢性肝炎患者が発症 |
なるほど。 「どちらでもない人が発症することはとても少ない」 と聞くと安心だなあ。けど肝硬変や肝炎って?どちらも聞いたことがあるような気がするけど・・・。 |
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そうだね。 肝炎は肝臓が炎症を起こしてしまう病気。 その中でも肝炎が慢性的に継続してしまう病気が慢性肝炎だ。 (反対は急性肝炎) そして慢性肝炎は進行し続けると、最終的には 「肝臓が小さく硬い状態に変化」 してしまう。それが肝硬変なんだ。 そして慢性肝炎が進行すれば進行するほど、肝臓ガンの発症率も上昇していってしまうんだ。 |
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なるほど、だから慢性肝炎が最も進行した状態である肝硬変患者が肝臓ガンの発症率が高いのか・・・。 じゃあ肝臓ガンの予防のためには慢性肝炎を進行させなければいいってことだね!慢性肝炎や肝硬変の原因は何なのかな? |
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下記の①②③④の4つが主なんだ。 ①B型肝炎ウイルス |
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③はなんとなく想像できるなあ。たくさんお酒を飲み続けて肝臓がダメージを受けてしまうのが原因ってことだよね?お父さんが 「年末で忘年会続きだけど、今日は休肝日」 って言ってたけど。 |
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そうだね。肝臓は栄養を貯蓄したり、アルコールなどの有害物質を無毒化する臓器だ。休肝日(お酒を飲まず肝臓を休める日)をあまり取らずに大量飲酒を長期間続けると、肝臓を酷使し続けることになる。すると、肝臓に脂肪が溜まった 脂肪肝(アルコール性脂肪肝) という状態になり、 アルコール性脂肪肝 の順に悪化していってしまう。 |
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なるほど。あとの3つは? | |
④肥満や運動不足 は③と少し似ている。 アルコールの摂り過ぎではなく、肥満や運動不足が続くことによっても肝臓に脂肪が溜まった 脂肪肝(非アルコール性脂肪肝) という状態になってしまう。すると、 非アルコール性脂肪肝 の順に悪化していってしまう。 近年はメタボなんて言葉があるように、④で肝炎や肝硬変になってしまう方が増加しているらしい。 |
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なるほど。じゃあ、 ③長期的な大量飲酒によるアルコール性肝炎 ってことだね? |
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そうだね。けれど③と④は合計しても肝臓ガンの原因の10~15%程度にしかならない。つまり肝臓ガンの原因の大部分は①B型肝炎ウイルスと②C型肝炎ウイルスなんだ。 |
肝臓ガンの原因 | ||
ウイルス性肝炎 | ③長期的な大量飲酒によるアルコール性肝炎 と ④肥満や運動不足による非アルコール性脂肪性肝炎 |
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①B型肝炎ウイルス による B型慢性肝炎 (肝硬変を含む) |
②C型肝炎ウイルス による C型慢性肝炎 (肝硬変を含む) |
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↓ 15~20%程度 |
↓ 60~70%程度 |
↓ 合計で10~15%程度 |
なるほど・・・。C型は特にすごく多いね・・・。 | |
そうだね。ではウイルス性肝炎について詳しく。 |
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルスによって発症してしまう肝炎だ。肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型など多数のタイプがあるけれど、慢性肝炎になり肝臓ガンへとつながってしまうのは主にB型とC型だ。 | |
うーん、ウイルスで肝臓が炎症を起こすのはどうしてなのかな?胃ガン対策のページで見たピロリ菌みたく、肝炎ウイルスが肝臓を攻撃し続けるのかな? | |
いや、似ているけどちょっと違うんだ。ピロリ菌が胃に住み着くのと同じく、肝炎ウイルスも肝臓に住み着く(肝細胞に感染する)。けれど肝炎ウイルスは肝臓を直接攻撃するわけではない(※)んだ。詳細はここでは割愛するけど、人間の免疫機能が肝炎ウイルスに感染した細胞を排除しようとして、肝臓そのものを攻撃してしまうんだ。 ※B型は肝細胞のDNAを直接傷つけることもあり、それにより発ガンしてしまうケースもあり。 |
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なんと・・・。それで炎症を起こしてしまうってことか。 | |
そうだね。そしてアルコール性肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎と同様、進行すると肝硬変になり、肝臓ガンの発症率も上昇していってしまうんだ。 |
B型・C型肝炎ウイルスに感染 |
↓ 一部の人がB型・C型慢性肝炎を発症 ↓ 肝炎の進行とともに肝臓ガンの発症率が上昇していく。(※) ↓ 更に進行し続けると最終的には肝硬変になってしまう。 肝硬変になってしまうと肝臓ガンの発症率が年3~8%程度にまでなってしまう。 |
※特にB型は、上述のとおり肝臓の細胞のDNAを直接傷つけることがあるため、肝硬変になる前から肝臓ガンの発症率が高い。
なるほどなあ。ピロリ菌によって胃炎が進行すると胃ガンの発症率が上昇していってしまうのとソックリだね。ということは、ピロリ菌を除菌すれば胃ガンを大幅に予防できるのと同じように、肝炎ウイルスを排除すれば肝臓ガンを大幅に予防できるんじゃ?? | |
そうだね。 後ほど詳しく取り上げるけど、C型は2014~2015年に相次いで登場した新薬により、ほとんどのケースでウイルスの完全排除が可能になった。 ただ残念ながら、2015年現在はB型肝炎ウイルスを完全排除できる薬はないんだ。なので、人間の免疫力によって完全排除できることはあるけど、免疫力で完全排除ができず持続感染状態となってしまった方 (このような方をキャリアといいます) は、生涯B型肝炎ウイルスに感染したままになってしまう・・・。 |
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そうなんだ・・・。うーん、じゃあどうすれば・・・。 | |
排除はできなくても肝炎の発症や進行を抑えることは可能なんだ。 HIVウイルス(エイズウイルス)も現在はまだ完全排除は不可能だけど、薬が開発されエイズの発症は抑えられるようになっている。それと同じような感じかな。 |
B型肝炎ウイルス |
残念ながら完全排除できる薬はないが肝炎の発症や進行を抑える薬はある ↓ 肝臓ガンを予防可能 |
C型肝炎ウイルス |
2014~2015年に相次いで登場した新薬によりほとんどのケースでウイルスの完全排除が可能 ↓ 肝臓ガンを予防可能 |
なるほど。早くB型も完全に排除できる新薬ができてほしいね。 | |
そうだね。これも後ほど取り上げるけど、研究レベルでは排除できる薬が見つかってきているので、そう遠くない将来には実用化されるのではと期待しているよ。 まずは自分がB型やC型肝炎ウイルスに感染しているかを検査しなければいけない。次のページでは、感染している可能性が高い人はどのような人かなどについて詳しく見ていくよ。 |